意地っ張りな君へ

side Ki ページ38

手紙？！


いきなり謎のワードが出てきて、しどろもどろになりながら、内ポケットをまさぐった

かさりと紙の擦れる感触がして、夢中で手繰り寄せると、小さな白い紙が折りたたまれた状態で出てきた



『昨日はごめん。コレないと、困るだろうから、とりあえず預けます。仕事が落ち着いたら、真っ先に会いたい』



見慣れた、癖のある文字が並ぶ



「なに・・これ」

「なにって、そこに書いてある通り」

「え・・」

「北山、上着も持たずに飛び出していったし・・私服、ほぼ俺の家にあるのに、着るものに困ると思ったから、マネに頼んだだけだよ」

「は・・」

「あんなふうに飛び出して行って・・お前が、心配だったから」


本当に、は？という形で、空きっぱなしの口
自分の今までの気持ちと、今初めて知った事実の整理が追い付かずに、藤ヶ谷とその紙を交互に見た


「じゃぁ、なに・・俺のこと嫌いになったわけじゃ」

「そんなわけないじゃん！」




急に大きな声を出した、藤ヶ谷が、俺の肩をつかむ手にぐっと力をこめた


「好きで・・やっと、手に入れたと思ったのに・・自分から手放したりしないよ・・」

「っ・・バ、バカ！こんなとこに入れて、気づくかよ！」

「気づくよ！着る時にポケット確認するでしょ！」

「しねーよ！女子かっ！」

「北山が、だらしないだけでしょっ！」




思わず声を荒げて、藤ヶ谷のほうを見ると、その端正な顔が、不意に歪む
その表情に、感情が激しく揺さぶられるのがわかって、思わず、藤ヶ谷の細い首を掴んで引き寄せた

予想外に、俺の事を思ってくれていたという事実に、こんな時でさえ、胸がきゅんとしてしまう


「っ・・好きだっ・・バカ・・」

「・・・俺も・・」

俺は本当にバカだ

耳元で、ぐすっと鼻を啜る音が聞こえたと思った瞬間、長い腕が俺の背中に巻き付いて、強くグッと腰を抱き寄せられるのを感じた

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