僕ハ君ガイテ愛ヲ知ル

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家に帰って、頭から熱いシャワーを浴びた

先ほどまでたっていたドームの熱気がまだ残っているように、心は激しく高揚していた



一つ一つのパフォーマンスを、出だしのA.D.D.I.C.Tから、順番に目を閉じて反芻する
メロディを口ずさみながら、こうしていると、いまだにステージの上に立っているようだった


ここで、センステ移動して・・ライブの中盤くらい、あの曲を思い出したところで
ふと、先ほどのニカと千賀の言葉がよぎって、そこで俺は頭の中の映像を止めた



俺はライブが、好きだ
メンバーやスタッフと、一つのものを作り上げていく過程が、好きだ

アイツらと歌って、その声が溶けあっていくように重なる瞬間、最高に気持ちがいい

別にそれは、北山に限ったことじゃない・・そう、思っている・・

思っている、はずなのに




アイツらのせいで・・なんだかモヤモヤする

シャワーを浴びて、すっきりとした体とは真逆に、なんだか落ち着かない心のまま、バスタオルで体を拭いた


気にしているわけじゃない
だけど、リビングへ戻って、ひと呼吸つくと、どうしても目に入ってしまうオーディオ機器と、思い出されるあの言葉

なんとなく、自分でも無意識のうちにスピーカーからあの曲を再生した



『ガヤ気づいてないんだ〜後でもう一回じーっくり歌詞よんでみたら』


ニカの、含みのある言い方をかき消すように、そのメロディに耳を傾けた
今は、もう全員でレコーディングしたものが音源になっているから、スピーカーから自分の声までも聞こえてくる

自分たちの曲を聴くことが、なんとなく気恥ずかしかった



『♪僕ハ君ナシデ愛ヲシレナイ 今だけを見ててほしいから 愛してる』


まっすぐな愛情が、心に染みわたってくる気がした
だけど、その愛は、大切な誰かに向けられている気持ちで、特にそれが俺だけだとは思わない


「ったく、みんな妄想が好きだよな…」


そう呟きながら、目を閉じると、疲れ切った身体に睡魔が襲ってくる


『♪笑うとき目を逸らすその癖は 僕だけがわかっているから 言葉を探さないでほしい』


心地よいメロディに体の力が抜ける
何度聞いても、北山っぽいな

スピーカーから聞こえてくる北山の声に耳を澄ませば、疲れ切った身体にじんわりと染み込み、温かくなっていく

なんでだろう、やっぱりアイツの声は、安心する

そう思いながら、静かに目を閉じた

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