みんなの宝物 3 ページ28
翔Side
「ちゃんと自分でやって? ほら、ここ持つの」
Aがあれやりなさい、これやりなさい
って言い出したのは3日前。
最初のうちはたまには叱ることも大事だって、
Aとゆいを見守ることにした俺ら。
好き嫌いはしちゃダメ。
着替えは自分でする。
靴は揃える。
出したものは片づける。
ご飯はこぼさない。
しつけとして、正しいと思うこともある。
でも度重なるAの要求に
ゆいちゃんは限界を迎えていた。
最初は頑張ってたよ。
お片付けも靴をそろえるのも、
ちゃんとできるようになった。
でもどんなに頑張ってもできないものはあって。
嫌いなものはどうしても食べられないし、
今までできなかったことを
急にやれって言われたって、
いくら学習の速い子供といえども難しい。
今だってパジャマのボタンが留められなくて
ゆいがイライラしだしたのが見てわかる。
いくらゆいのためだとはいえ
これはさすがにやりすぎだろ。
結「ままっ…でき……い…」
「できなくない。ほら、もう一回」
結「できなっ…ふぅ…ふっ、ふぇっ……」
「泣いたってダメなんだよ?
ちゃんとボタンもって」
結「ん゛ーん゛……もぉ、やっ!!」
半ベソかきながら一生懸命ボタンを
穴に通そうとしていたゆいだけど、
いくら頑張ってもできずに
ついにパジャマを脱いで放り投げてしまった。
そりゃ嫌にもなるよなぁ。
もう20分もやってんだもん。
「こらっ!! 投げたらダメでしょ!! 」
翔「A、ストップ。やりすぎ」
逃げるゆいの腕を掴んで手の甲をペチって叩いた
Aの手首を強く握って、
これ以上はダメって首を横に振った。
邪魔しないでよっていうかのように
俺を睨んできたA。
ゆいは俺に抱きついたまま泣いている。
可哀想に……
身体冷えちゃってるね……
翔「和? これから風呂だよね。
ゆいちゃんもう一回入れてやってくれる?」
和「ん、わかった。ゆいちゃん、おいで?」
長い時間下着姿だったせいで
冷たくなってしまったゆいを和に任せ、
俺はAの目の前に座った。
翔「最近なんかおかしいよ?」
何かあった?って俺の問いに
うつむいたまま首を振るA。
自分でも、やりすぎたって思ってんのかな。
翔「今日はもういいじゃない。な?」
「ん……」
結局この日も、コクンと頷いたAに
困ったことあったら相談しろよ?って
頭を撫でてやって話は終わった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
