パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ18)

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松岡先生のお説教　6　(翔) ページ18

松岡Side

翔の処置が終わってすぐ、俺は翔の兄貴に連絡をした。

一時呼吸停止寸前まで状態が悪化したが、
挿管もなしに今は安定してる。

そう伝えた時、兄貴は驚いた様子で
「出勤しているんですか!?」と
聞いたこともないような声を出していた。

俺が朝会ったときには、
翔はもう治ったから大丈夫だと言っていた。

午前だけなら働ける。
兄貴からも了承を得ている…と。

俺はそれを疑うこともなかったが、
実際はすべて翔の嘘だったようだ。

朝聴診した時にはまだ
狭窄音もわずかに聞こえていて、
体力の回復も思わしくなく
無理をすれば発作を起こす危険性がある。
というのが、兄貴の診断結果だったらしい。

それは翔にも伝えてあったようだが、
今ここにいるということは
兄貴の忠告を無視したということなのだろう。

大丈夫だと思ったのかもしれないが、
現にこうして大発作を起こして白い顔で横たわっている。

どうしてこいつは、こうも無理をするのか…

松「おっ、翔。起きたか?」

翔「ぅ…ぅぅ……」

夜になって目を覚ました翔が、
小さく声をもらしながら
誰かを探すように目をゆっくりと動かしている。

兄貴、見つからないなぁ。

もう帰っちゃったからな…

松「胸の音、聞かせてな?」

大きな発作を起こして、苦しい思いして、
今の翔は不安でいっぱいなのだろう。

そんなときに家族に会えないのは
入院で活動を制限されるより、
苦痛を伴う治療をされるより、
はるかに辛いことのはずだ。

松「服捲るぞ?」

翔「ぅぅ……さ……にぃ……」

俺に聴診されながらも、
翔の口は兄貴の名前を呼び続けている。

実は兄貴に帰ってくれって言ったのは、俺なんだ。

今回は俺に任せてくれと頼んで、帰ってもらった。

ちょっと約束を破っただけ。

でも、こんなことが何度も続けば、
いつか患者さんにまで危害がおよびかねない。

そうなって一番傷つくのは翔だ。
翔の身体だってもたなくなる。

それだけは、避けなくてはいけない。

だから、ここで一度きちんと
翔にわからせなければと思ったんだ。

松「ゆっくり息吸って?」

翔「うぅ…ぁっ……んっ…」

松「おいおい。手ぇ動かすんじゃない。
息止めるなよ?」

翔「ぁっ、ぅ……さと、に……」

松「兄ちゃんは家で待ってるから。
ほら、聴診くらいさせなさい」

少し厳しいようだけど、仕方ない。

もう少し回復してきたら、ちゃんと話しないとな。