パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ16)

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松岡先生のお説教　4　(翔) ページ16

翔Side

翔「そろそろ始めますね。
少しチクッとしますよ?」

検査室に移された中川さんは
少し身体を固くして緊張している様子。

それでも俺をいじめることは
忘れていないようで(笑)

『おい、医者が嘘ついていいのか』

翔「…というと?」

『少しなんて、気休め言わなくていい』

翔「うーん、そうですか…
では、すごく痛いと言っても頑張ってくれますか?」

俺の冗談に
『それも嘘なんだろ、ヤブ医者』
と言いながら笑ってくれた中川さん。

少しは緊張もほぐれたようで一安心だ。

ナースにしてみれば我儘言い放題の無愛想で恐い人
って印象なんだろうけど、そんなの外側だけ。

それは出会ったときからわかってたから、
打ち解けてくれるまでは
絶対にあきらめないと決めていた。

『おい、咳。大丈夫か?』

今だって俺がちょっと絡まった痰に咳き込んだだけで
こうして心配してくれる。

本当は優しくて情に厚い、いい人なんだよ。

翔「すみません。大丈夫です。
では麻酔していきますね。少しチクッと……あ。」

『いいよ。それが決まり文句なんだろ?』

再び笑い声が響き、和やかな雰囲気の検査室。

だけどそれとは正反対に
俺自身はかなり焦っていた。

麻酔を終え肺に向けて
針を構えたころから感じ出した、喉の違和感。

いつもの、発作を起こす時の前兆だった。

それがだんだんと強くなってきている。
早く終わらせないとマジでやばい。

幸い手技に集中しているときには
咳は出なかったからよかったものの、
組織を採取し終えたころには
息苦しさまででてきてしまった。

翔「中川さん、終わりましたよ。お疲れ様です」

『あぁ…あんたもだいぶ顔色悪いみたいだけど。お疲れか?』

翔「そうですか? 元気満々なんだけどなぁ」

そうか…と言って目をつぶった中川さんに
ゆっくり休んでくださいと一声かけて検査室を出る。

マスクを取って新鮮な空気を吸い込んだ瞬間
激しく咳き込んで身体が一気に熱くなった。

これをきっかけに始まった本格的な咳き込みと
発作時に特有の息苦しさ。

吸入薬は……
医局に置いてあるカバンの中か……

看「先生!!どうしたんですか!!」

力を振り絞って医局へ向かっている途中
俺の様子を見た看護師が慌てて声をかけてきた。

大丈夫とも言えずに
ただ手を挙げて応えることしかできない俺。

それすら今の身体にはきつかったのか
いきなり視界がぶれてその場にしゃがみこんだ。