パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ12)

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長男の涙　12 (智) ページ12

翔Side

翔「調子はどうですか～?」

病室のドアを開けながら、
ベッドを起こして本を読んでいた智にぃに話しかける。

最高と言いながらニコッと微笑んだ智にぃは、
気分もよさそうだ。

治療を開始してから5日。

体力が低下していた分時間はかかってるけど、
確実に回復を見せている。

胃の炎症が治まってくると同時に食事も再開し、
少しずつだけど食べる量も増えているしね。

精神的に落ち着いているからか、
いまのところ戻すこともない。

智「なんかここの先生みたいだね、翔。
ただお見舞いに来ただけでしょ?」

翔「いや、智にぃが入院している間だけは
ここの臨時の医師だから。
ただ、治療は和先生に委託してますが(笑)
治療方針を考えているのは俺ですよ」

大学病院なんかに入院させるより、
自分の病院の方が気持ち的にも楽だろう。

そう考えて、
クリニックの個室に入院してもらった。

さすがに勤務先の病院を休むことはできないから、
仕事が終わってからこうして
智にぃの様子を見にきてるんだ。

翔「あれ、これは?」

智「それはねぇ、高橋さんがくれた。
これは佐々木さん。
あっ、この折り紙はゆいちゃんだよ」

昨日来たときよりはるかに華やかになっている病室。
花瓶なんていくらあっても足りないくらい。

他にもフルーツやら、
手作りなのかな? 毛糸で編まれたひざ掛けなんかも置いてある。

智にぃがこの病室に入院していることを
患者さんがどこからか聞きつけたみたいで、
連日お見舞いにきてくれるらしい。

智「手作りの料理なんかもね、もってきてくれるんだよ。
食べられないのが申し訳ないけど…
ねぇ、ちょっとくらいならいいと思う?」

冷蔵庫を開けてみると
ヨーグルトやゼリーなんかに混ざって、
タッパーもいくつか入っている。

その中の一つを手に取って蓋を開けてみると、
そこには大根の煮物が入っていた。

お腹に優しくてなおかつ美味しいものを…と思って、
作ってくれたんだろう。

翔「じゃあこれ、ちょっと食べてみる?」

ちょっと汁を舐めてみたけど薄味にしてあるようだし、
だんだんこういうものも食べていかないとだから。

今はまだAが作った
ゆるいおかゆしか口にしてないからね。

智「ふふっ。やったぁ」

嬉しそうに笑って
小さく切った大根を口に含んだ智にぃ。

優しい味がする…って微笑んだ智にぃを見て、
これなら退院の日も近いなって、心の中でガッツポーズをした。