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えまーじぇんしー 9 ページ45

智Side


雅紀の咳が落ち着いた頃、
大きく息を吐き出した僕は、床にあぐらをかいてうつむいた。


そろそろ休みを取りながらじゃないと
きつくなってきたかなぁ…


もう移動する気にもならないし、
このまま雅紀の隣でしばらく目をつぶっていることにした。


視界がさえぎられると耳に神経が集中して
リビングの音がよく聞こえる。


ズキズキしだした頭の痛みを逃がすように
ゆっくり深呼吸をしていると、
誰かが一際速い呼吸をしていることに気付いた。


左右を見渡すと
一つの布団だけ他と比べて大きく上下している。





智「…かず? どした? 息、苦しいの?」



立ち上がるのもだるくて膝と手を床に付いたまま
ずりずりと和のところまで移動し、
布団で隠れている和の顔をのぞきこむ。


和は目をぎゅっとつぶり、
眉間にしわを寄せ、辛そうに呼吸をしていた。





智「ちょっと胸の音聞くよ?
そのままでいいから、じっとしててね。」


雅紀のところに置きっぱなしだった聴診器に
手を目一杯伸ばして、たぐり寄せる。


服の中に手をすべりこませ
胸に聴診器を当てようとした時、和が小さく口を開いた。





智「かず? 痛いの?」


和「んっ…い…たっ……」


智「うん。どこ痛い? 胸?」


和「あ…たま……」


智「頭が痛かったのかぁ。
そっか…。ちょっとお口開られる? あーんって。」



聴診器を外して膝の上に置き、
腰を屈めてわずかな口の隙間を指で開いてのぞきこむ。


ちょっと脱水起こしてるのかなぁ…


重症ではないにしても
昨日から薬を飲むとき以外はほとんど水分を取ってないし、
欠乏していることは確かだろう。


頭痛もそのせいかもしれないし、
一応1パックだけ点滴してあげようか。


今の僕に上手く針が刺せるかが問題だけど、
このままじゃ和も寝られないだろうし
ここは気合を入れてやるしかない。





智「かず、少しだけチクッとするからね。」


和「んっ、んんっ…」


智「ん〜、動かないでね〜
頑張って…」



駆血帯を巻いた腕に消毒をして針をかまえてみるも、
指が震えて針先が動いてしまう。


そろそろやばいな…ぼく…
たのむから、一発で入れさせてくれ…





和「んっ!!…ぅぅっ……」


智「よーし…いいよ。おしまい。」



瞬間的に絞り出した集中力は
思いのほか僕の体力を奪っていったようだ。


息を止めていたせいで荒くなった呼吸を整える。


頭痛はさらに増したけど、
和の寝顔を見ていると
身体からはスッと力が抜けていった。

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作者名:ちさ | 作成日時:2013年5月17日 17時

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