さとくんの虫歯 9 (智) ページ9
智Side
僕が手をそっとどかしたら
お父さんが奥歯にあった邪魔なやつをとってくれて、
やっと口が閉じられた。
ホッとしたからなのか、目から涙が出てくる・・・
智「うっ・・っ・・・うぅ・・」
父「よしよし。
頑張った、頑張った。」
泣いちゃダメなんだなんて考える暇もなく涙が溢れてきて
顔を隠すために横を向いていたら、
お父さんの手がそっと背中に触れてきた。
優しくトントンしてくれて、だんだん涙が止まってくる。
父「大丈夫?
ちょっとやりすぎちゃったね。
どう、 落ち着ついてきたかな?」
智「う、うん・・・
ごめんなさい・・・頑張れなくて・・・」
さっきまでやめてほしくてしょうがなかったのに、
落ち着いてくると急に心がもやもやしてくる。
お父さんは虫歯を治そうとしてくれてたのに、
僕のわがままで困らせちゃった。
お父さんね、すごく忙しいんだよ。
朝、僕らより先に家を出ていって、
夜、僕らより後に帰ってくる。
疲れた? って聞くと、そんなことないって言うし、
大変だねって言うと、好きな仕事ができて幸せだよって笑うけど・・・
でも絶対、疲れないはずはないし、
大変じゃないはずもないんだ。
だから僕が、こんなふうに困らせたら、
もっとお父さん疲れちゃうから・・・
だから・・・
智「・・・・ごめんなさい。
ぼく、頑張るから。痛くっても頑張れる・・・
だから、お父さん・・・」
父「いや、やめよう。」
智「え?・・・・」
父「痛いのを我慢するのはやめよう。
お父さんが痛くなくなるお薬使ってあげようね。」
またあの痛みを我慢しなきゃいけないと思っていたから、
お父さんの言葉にびっくりした。
でも、それならなんでもっと早くにお薬使ってくれなかったんだろう・・・
父「よし、それじゃあ、あーんって大きく開けて?
うん、そうそう。
もう少しだけ、あー。」
智「あー・・・」
父「おっ、上手にできたね。
じゃあね、すこーしだけチクッとするよ?」
智「ふぇ?・・・・んっ!!」
外してくれていた手袋を付け直して
完全に歯医者さんに戻ったお父さんに
ちょっとビクビクしながらも頑張って口を開けると、
思ってもいなかったものが登場した。
僕、お薬って飲んだり塗ったりするやつだと思ってたのに・・・
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
