パパが治してあげようね *ARS* 5 (ページ6)

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さとくんの虫歯　6　(智) ページ6

智Side

僕の涙が止まるまで待っていてくれたお父さんは、
“よくできました”って笑ってからマスクをもとに戻した。

なんで“よくできました”なのか、僕にはよくわからないけど、
お父さんは嬉しそうな顔をしていた。

僕が泣いて嬉しいなんて、お父さん変なの。

父「さ～て、さとくんがスッキリしたところで、
そろそろ虫歯退治を始めようかな。
イス倒すよ。
ごろんってするからね。」

智「んっ・・・」

急にイスが動いてびっくりした。

白い天井を見ながらドキドキしている心臓を落ち着けようとするけど、
なかなか治まらない。

どこからか小さな子の泣き声が聞こえてきて、
よけいにドキドキしてきた・・・

でも、泣きたくなる気持ち、僕にもわかるなぁ～

ただ寝てるだけなのに、怖いんだもん。

まーくんやかずくんなんて、大泣きだよね、きっと。

父「ん? あぁ～、泣いちゃってるねぇ。気になる?」

僕が声の聞こえる方をじーっと見ていたら、
お父さんが顔をのぞきこんできた。

智「んーん。
もしね、まーくんやかずくんが歯医者さんにきたら、
あんなふうに泣いちゃうかなぁって。」

父「そうだね。あの2人は泣き虫くんだからね。
たくさん泣いちゃうかもなぁ。」

智「うん。じゃあさ、2人は僕よりいい子?」

父「え? どうして?」

智「だって、お父さん、
僕が泣いたらいい子だねって言ってくれたよ?
いっぱい泣く方がいい子?
あの子みたいに、おっきい声で泣いたらえらい?」

父「ん～・・・そういうわけではないんだけどねぇ。
あんまりたくさん泣かれると、お父さんも困っちゃうかなぁ。

でもね、さとくんは泣きたかったら泣いていいんだよ。
それで悪い子にはならないからね。

もちろん、和くんやまーくんが怖いよーって泣いても、
悪い子ではないよ。」

智「ふ～ん・・・わかったぁ。」

わかったって言ったけど、本当はよくわからない。

僕が泣いたらえらいの?
でもたくさん泣いたら困っちゃうの?
困っちゃうのに悪い子だとは思わないの?

お父さん、僕にはまだわからないよ。

おっきくなったら、お父さんが言ってることも、
わかるようになるのかなぁ。