食べたくない 13 (雅) ページ48
智Side
翔「ゆいちゃん、ちょっときて?」
ゆいちゃんを連れて
お見舞いに来てくれたAと話していると、
翔がゆいちゃんを手招きして
ベッドサイドのイスに座らせた。
何をするのかと思えば、
さっきまで雅紀が食べようとしていたゼリーを手渡している。
翔「はい、どうぞ。
あぁ、テーブルあったほうがいいかな。
マサの隣座らせてもらおうか。
ほら、入れて〜って。」
結「ましゃ、いれてぇ〜」
ベッドの端に寄った雅紀の隣に、
ゆいちゃんを座らせてやった翔。
ゆいちゃんに久しぶりに会えた雅紀も、
ニコニコと嬉しそうだ。
結「うさちゃん、ね〜」
雅「ふふっ。かわいい?」
結「ん、かわい〜」
頬に貼られているうさちゃんシールを
ゆいちゃんが触っているうちに、
目の前のテーブルにゼリーが置かれる。
僕はこのときになってやっと、
翔がやろうとしていることに気付いた。
結「ましゃもたべる?」
ゆいちゃんなら、きっとこう言ってくれるって、
翔はわかっていたんだろう。
この子の優しさを信じての行動だったんだね。
結「ん〜? ましゃ〜?」
問いかけに答えられず苦笑いをしている雅紀に、
ゆいちゃんも首をかしげている。
さっきまで、あんなに苦労してたんだもん。
そう簡単に食べることなんてできないよね。
翔「ゆいちゃんが食べていいよ。
あーんしてあげようか?」
結「うん!!
しょーちゃ、あー、ああー。」
翔「はいはい。ちょっと待ってよ〜
ほら、あーん。」
翔に食べさせてもらって、ゆいちゃんは嬉しそう。
おいちー♪って腕を振って喜んでいる姿が可愛くて、
隣にいる雅紀も微笑みながらゆいちゃんを見ている。
翔「おいしいねぇ。」
結「ゆいねぇ〜、じぇりーすきなの〜」
翔「うん。ゼリー好きなんだよね〜
もっと食べる? あーんする?」
結「んっ、こんどゆいやるぅー」
翔「ゆいちゃんがやりたいの?
じゃあどうぞ。はい、スプーン。」
結「ん〜♪
ましゃ、どーじょ。 あーーん」
雅「えっ・・お、おれ?」
翔はここまで計算していたのだろうか。
ゆいちゃんの性格なんかも考えたうえで、
上手に誘導してたのかな。
今まで僕は、真正面から雅紀の心に向き合おうとしてた。
なんとかしたい!! って思いが強すぎたんだ。
でも、頑張りすぎてる雅紀には
ゆいちゃんみたいに純粋で自然な言葉で、
後ろからそっと背中を押してやるくらいが
ちょうどよかったのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 458人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
