食べたくない 12 (雅) ページ47
翔Side
雅「ねぇ、智にぃ。
ご飯終わったら、外行っていい?」
智「え〜、今日ちょっと寒いよ?」
雅「いいじゃん、お願い!!
ちゃんとあたたかくしていくから。」
智「う〜ん・・・じゃあ、行っていいからさぁ。
その前に・・・」
そこまで言ったところで、
勘付いた雅紀の表情が曇った。
目の前に置かれたゼリーとスプーンを、
眉間にしわを寄せながら見つめている。
智「少し口に入れるだけでいいから。」
雅「ん・・・・」
身体自体は、食べ物の受け入れ態勢は整ってる。
あとは心の準備だけだ。
昨日チャレンジした時は口に入れる直前で断念した。
でも俺は、今はまだそれでいいと思ってる。
むしろ納得できないのは雅紀の方で。
食べたくない、けど、食べたい。
いつまでもこのままじゃダメだって、
焦っているんだろう。
智「今日はやめとく?」
雅「・・・・んー・・・ん。
食べる。」
翔「ん。じゃあ食べてみようか。」
本当は焦りすぎもよくないけど、
雅紀が食べると言っているならそれを止める理由はない。
一度でも口に入れられれば、
もう平気なんだってわかるはず。
たった一口。
でもそれが、雅紀にとっては、
手が震えるほど大変なことで・・・
翔「俺が食べさせてやろうか?
ほら、口開けてごらん?」
雅「ん・・・・」
翔「やっぱやめとく?」
雅「・・気持ち悪く・・ならないかなぁ・・・」
昨日から、雅紀が気にしているのはそのことばかり。
毎日流動食入れてるんだし、
胃腸が働いていないわけじゃない。
だから、食べたとしても
胃がビックリして嘔吐するとか、そういうのはないと思う。
あるとすれば、気持ちの問題だろう。
翔「まさき、ほら、シロップだけ。
ちょっと舐めてみ?」
雅「ん・・・ん・・・」
雅紀は口をぎゅっとむすんで下を向いてしまったし、
今日はもう、俺がいくら口元にスプーンを近づけても、
口を開けてはくれなそうだ。
もし、ほかにできる人がいるとすれば・・・
『ましゃ〜〜。あっ、うさちゃーん!!』
智「あっ、ゆいちゃんいらっしゃい。
Aも、朝から来てくれてありがとね〜」
結「ねぇ、これなーに?」
智「あぁ、ゆいちゃん。
触っちゃダメだよ〜
抜けちゃったら大変だからね。」
結「はーい。」
雅紀の鼻から伸びているチューブを
珍しそうに見ているゆい。
今回はこの子の力に賭けてみるか・・・
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
