さとくんの虫歯 4 (智) ページ4
智Side
智「おとっ・・さ・・・ぼく、こわい・・」
父「うん。怖いよねぇ。
いつも何も言わないんだから。
予防接種の時だって、みーんな泣いてるのに、
さとくんだけ泣かないんだもん。」
智「だってぇ・・・ぼく、ないたら・・・だめでしょ?」
父「みんなが泣いてるから、
お兄ちゃんは強くなきゃ、って?」
智「ん・・・ないたら、おにいちゃ・・じゃ、ないもん・・・」
父「そんなことないよ。
お父さんだって、注射は怖いよ。
泣きたくもなる。
でも、もう大人だからね。さすがに泣けない。
でもさ、さとくんはまだ、小学生なんだよ。
怖いと思うことの、何がいけないの?
怖いことが涙で流せれば、それでいいじゃない。」
智「でも・・・ぼくがないたら、
おとーさんも、おかーさんも、たいへんだよ?」
父「そうだねぇ、5人いっぺんに泣かれたら大変だ。
でもね、それでいいんだよ。
さとくんはお父さんの大事な子供だからね。
子供はたくさん泣いて、
お父さんとお母さんに助けて〜ってすればいいんだよ。
強いお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんが弟を守ってくれて、
お父さんはすごく助かってるけど・・・
でも、怖い時くらい泣いたっていいの。
いつも頑張ってくれてるんだから。
さとくんは、十分すぎるくらい、いいお兄ちゃんだよ。
お父さんちの、自慢のお兄ちゃん。」
僕は、お父さんは泣かない子の方が嬉しいんだと思ってた。
泣かない方が、いい子なんだと思ってた。
でも、お父さんね、
僕が泣いたらいい子だねって言ったんだ。
悪いお兄ちゃんだとは言わなかった。
背中をトントンしながら、
僕をぎゅーって抱きしめてくれたんだよ。
父「もっと早くに言ってやればよかったかな?
今までのがいっぱい溜まってるね。
おーい、そんな狭いところにいないで、ひろ〜いお外に出ておいで〜」
僕の目をそ〜っと撫でたお父さんの指が温かくて、
目に溜まっていた塊が溶けたみたいに、涙がボロボロと流れた。
僕は今、歯医者さんが怖くて泣いてるのかな・・・
でも、さっきみたいに胸がぎゅーって苦しくない。
むしろポカポカしてる。
きっと僕、安心したんだ。
怖いっていうことは怖くないって、お父さんが言ってたから。
お父さんの胸で泣くの、なんだか気持ちよかった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
