0歳のママ 6 ページ29
智Side
「だからっ・・んっ・・なかったことに、したい・・・
・・この子が、いなかったころに、戻りたいっ・・・」
智「そっか・・戻りたいか・・うん・・・」
ようやくすべてを話し終えたAは、
悔しそうに唇を噛みしめながら泣いていた。
なかったことにしたいって、
Aがそう思うのも、わからなくはない。
一番そばで支えてくれるべき存在が、いないんだから。
父親がいることが当たり前だよね、一般的には。
だから、自分は世間の“ふつう”とは違うんだって、
幸せな家庭の仲間入りをすることはできないんだって、
そう思ってるんだよね。
ただ、ふつうと違うことが不幸なのかといったら、
それは違うと思う。
型にはまってなければ
幸せな家庭じゃないなんて、誰が決めたの?
“お父さんがいないのね。かわいそうに・・・”
そう思われることもあるかもしれない。
“大変ねぇ”って言われることもあると思う。
でも、それで怯む必要はないでしょう?
だって・・・
智「幸せって、なんのことを言うんだろうねぇ。
お金があること?
働き者の夫がいること?
Aはさ、パパがいないから、
赤ちゃんが幸せになれないって思ってるんでしょ?」
「だって・・・わたし一人じゃ・・・」
智「じゃあ、もしパパが、
子育てに協力的じゃなかったら?
妻より、子供より、
自分が遊ぶことの方が大事だったら?
それで、あぁ〜幸せだな〜って思えるかな。
ちゃんとパパはいるんだよ? ちゃんと家庭はあるんだよ?
幸せになれるはずだよね。」
「ん・・・・・」
智「パパがいなくたって、
幸せに暮らしてる人だってたくさんいるよ?
そりゃ、苦労することもたくさんあるだろうけどさ。
幸せって、自分基準でいいんだと思うよ。
自分が幸せだと思ったら、
それがその人の幸せになるんじゃないかな。
つまりは、誰にだって、どんな状況だって、
幸せは作れるってこと。」
「わたしにも・・・作れるの?
こんな・・なのに・・・」
智「今はまだ不安だろうねぇ。
そりゃそうだよ。
Aはまだ赤ちゃんママなんだから。
赤ちゃんと一緒に、
Aもママとして成長していくんだよ。
この子と一緒にさ、我が家にしかない幸せ、
少しずつ作っていけばいいんじゃない?」
「できるかな・・・」
智「できるよ。だって、Aだもん。
僕の妹だもん。」
「ふふっ、なにそれ・・・」
智「そう。そうやって笑ってれば、大丈夫だよ。」
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
