膀胱炎 4 (翔) ページ15
翔Side
浩「しょーせんせー、サッカーしようよ〜」
翔「え〜、ボールないも〜ん。」
浩「あるよ、ほら!! えいっ!!」
近くに落ちていた小石をボール代わりにして、
ボテボテと転がっていく石を一生懸命蹴っているコーくん。
ついさっきの不安顔は消えていて、
いい笑顔を見せてくれている。
しばらくはそれで遊んでたけど、
ほどよいところで休憩を取ることにして、
2人でベンチに座った。
コーくんの細い手首に指を添えながら脈をとって、
呼吸の状態の確認をする。
翔「苦しくない?」
浩「へーき!!」
うん、特に異常はなさそうだ。
むしろ問題なのは俺の方。
まだ病み上がりの子を走らせるわけにはいかないから
早歩き程度しかしてなかったのに、
それでも今の俺には息が切れるほどきつい。
浩「くるしーの?」
荒い息遣いが伝わらないように無理に鼻で呼吸をしていたら、
コーくんが俺の膝の上にまたがってきた。
びっくりして固まる俺に、
深呼吸を促す小さな手が大きく上下する胸を撫でる。
浩「苦しいときはこうするんだよ、ってね、
僕のせんせーが言ってたよ。
すぅー、はぁーって。」
翔「そっかぁ。
スー・・・ハァー・・・・うん、ほんとだ。
すごく楽になったよ。」
俺のこと、良く見てるんだね・・・
もう俺がどんなに隠しても、ごまかせないだろうな。
浩「せんせー、もうぼくお部屋帰る。
いっぱい遊んだもんね。」
俺のことを気遣ってくれているのだろうか・・・
本当はまだまだ遊びたいはずだ。
だってさっきも、“今度は何しようかなぁ〜”って、
目をキラキラさせていたから。
でも、もう俺の身体がもたない。
寒気はさらにまして、頭はボーっとしてきた。
身体は思うように動かないし、
なによりこれ以上心配をかけたくない。
今回は、この子の優しさに甘えよう。
もう遊んでやる元気は残ってないけど、
これくらいはせめて・・・
翔「じゃあ、もう少し日向ぼっこしてから帰ろう。
もっとこっちにおいで?」
俺が笑顔を見せたことで安心したのか、
身体を寄せてきたコーくんの頭を
“ありがとう”って、ポンポンと撫でた。
浩「あったかいねぇ〜。きもちーねぇ〜」
俺の胸に頬をすりつけながら微笑んでいる
お日様みたいな笑顔に、俺の心も温かくなった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
