パパが治してあげようね *ARS* 5 (ページ11)

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さとくんの虫歯　11　(智) ページ11

智Side

智「・・・っていうのが、僕が初めて虫歯になった時の話。」

僕の思い出話を、静かに聞いていた和と雅紀。

僕だって、歯医者さんが痛いのは知ってるんだよ、って言ったら、
和が急に立ち上がって、僕を見降ろしてきた。

和「甘い!!!!」

仁王立ちする和に威圧感を感じながら言葉を待っていると、
人差し指でビシっと僕を指してきた。

もう・・・何を言いだすのかと思えば・・・(笑)

智「甘いって、何が?」

和「甘いよ、智にぃ!!
ちょっと歯を削るくらいでビービー泣いてんじゃないよ!!
俺はもっともっと痛い治療してるんだぁ!!」

まぁ・・・和の言うことはごもっともですけど・・・

目の前の子犬ちゃんは、
歯を削る前から泣いちゃってません?(笑)

・・・なんてね。
そんなこと、思ってても言わないけどさ。

智「そうだよね。
和はもっと痛い治療を頑張ったんだもんね。
これくらいで痛いなんて言ってちゃいけないね。」

和「まっ、まぁ・・・
小学生にしては・・頑張ったと思う、けど。」

僕が申し訳なさそうに言ったら、
ちょっと言い過ぎたと思ったのか、
唇を尖らせながらボソッとつぶやいてきた(笑)

威勢がなくなった子犬は、
シュンとなりながら床に座っている。

そして思い出したように不安そうな顔で僕を見てきた。

智「和が怖いのは、わかってるつもりだよ。
でも、ちゃんと雅紀に診てもらわないと。
僕みたいに、痛い思いをしないように。」

和「痛いのするから・・・・・行きたくない・・・」

智「早く治せば、痛いのもないよ。
今はまだ歯の痛みはないんでしょう?」

和「・・・・うん。」

智「じゃあ早めに行って、治しておかなきゃ。
大丈夫。雅紀だってお父さんの血を継いでるんだよ。
痛いのも怖いのも取っちゃう、魔法の手をもってる。」

雅「うんうん♪
お兄ちゃんの魔法の手で、
バイキンさんをやっつけてあげるよ。
ね、和。怖くないから。一緒に行ってこよう?」

相変わらず唇を尖らせたままの和は、
下を向いたまま小さく頷いた。

雅にぃに魔法なんて使えない!! って攻撃してたけどね(笑)

それでも今、
和が恐怖と戦ってくれてるのを、雅紀はわかってるから。

言い返すこともなく、優しく頭を撫でてやっていた。

その姿が、あの日のお父さんと重なってね・・・

目を閉じると大きな手のぬくもりと優しさが蘇ってきて・・・

僕も患者さんに自分の手で魔法をかけてあげたいって、
そう思ったんだ。