パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ10)

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小学生のまーくん　10　(雅) ページ10

智Side

「で、今日の検診はどうだった?」

ソファーの真ん中にストンと腰をおろした雅紀に、翔がニコニコしながら話しかける。
この質問も、もう二度目。

家に帰ってきた雅紀は食事中もなんとなく元気がなくて。

仕事で何かあったのかと思い聞いてみたけど、「先にお風呂入らせて」と言ってリビングを出て行ってしまった。

潤が何か知ってるふうなんだけど「本人から聞いてやってよ」って言うから。
それなら、と思って雅紀が戻ってくるのを待っていることにしたんだ。

雅「何もなかったよ。
あ、井ノ原先生に会った。校長先生になっててびっくりしちゃった」

翔「井ノ原先生って、あの…小学校の先生してた?」

雅「そうそう。嬉しかったな～。昔のこと思い出したりしてさ。
ほら、俺が脱走した時の…」

翔「あぁ、そんなこともあったな～
俺、あんまりよく覚えていないんだけどさ」

「智にぃ覚えてる?」って雅紀に聞かれて「少しね」って答えたけど、実は僕もほとんど覚えてないんだ。

「笑った時の顔、昔と全然変わらなかった」懐しそうに表情を緩める雅紀は、本当に嬉しそう。

検診で何か問題があって落ち込んでるのかと思ったけど、違うっぽいかな。

智「先生、僕のことも覚えてくれてるのかな」

雅「覚えてるよ。智にぃのことも翔にぃのことも。
先生言ってたよ。弟思いの素敵なお兄ちゃんだったね、って。ふふ」

自分が褒められたかのように少し照れながら話す雅紀に、僕も翔もつい顔がゆるゆるになる。

やっぱり家族が笑ってると嬉しいし、弟がいつまでも笑顔でいてくれることは兄としては安心する。

すごく楽しそうなんだよ。嬉しそうなんだけどさ…
でも普段なら、もっと心から笑ってたよね。

だって今日はまだ、あひゃひゃって、はじけたような笑顔を見てないもん。

翔「じゃあ、検診は何事もなく終わったんだ?」

雅「うん。怖がってなかなか俺に近づけない子もいたけどね。
でも最後はちゃんと受けてくれたから。
なのにね、先生たちにすいませんでしたって何度も頭下げられちゃった。
全然平気なのにね。俺、その子の気持ちよくわかるから」

翔「そっか。さすが、子供の味方だな、雅紀は」

雅「うーん…そんなことはないよ…」

さっきまで前を向いて話していたのに。
なのにどうして急に目を伏せて悲しそうな顔?

手は膝の上で指を絡ませるようにもぞもぞと動いている。
落ち着きがなくなったのは、心の傷に僕らが触れたからなのかな。