パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ24)

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ガラガラ声　12　(和) ページ24

和也Side

俺の知らないうちに診察室の前でコソコソしていた奴がいたらしい。
黙って覗き見するなんてなんて奴だ!!

…っていうのは冗談で、帰らずにいてくれたことにホッとしているっていうのが本音。

せっかく終業後も残ってくれていたのに、俺の我儘で追い出してしまったから。
ちゃんと「ありがとう」と「ごめんね」を言っておきたい。

斗「な、なに…?」

ベッドに座る俺の目の前にいた斗真の手を取り、それを胸の前で両手で包み込む。

そのまま顔を上げ、目をじっと見つめて伝えるのは「ありがとう」。
ペコッと頭を下げて「ごめんなさい」。

智「ふふ、声だしてもいいんだよ、和。
大きい声とか無理に出さないでねってこと」

斗「わかった、気持ちは伝わったから。
そんな目で見つめられたら恥ずかしいよ」

検査で声帯に小さいポリープがあるってわかって、治療のために出来るだけ声を出さないようにってことになったから。

これ以上悪くなって手術になったりしたら嫌だもん。
だから俺は、今日はもう声は出さない。

斗「も、もうわかったから。
見つめられすぎて石になりそう～」

翔「大丈夫、石にはならない」

斗「そんな真面目に返さないでくださいよ(笑)」

うちの結心ちゃんやAには優しいのに俺には冷たいから、ちょっと意地悪してやろうと思って。
まばたきもせずに見つめ続けてたら本気で困らせちゃった。

でもここでやられっぱなしじゃないのが斗真。

斗「そっか、和は俺のことが好きなんだね。
ちゅーする?ちゅー」

和「ちょっ、わ、わぁ!!」

なにすんだよ!!
いきなり顔を近づけてくるもんだから叫んじゃったじゃん。

でも、こういうユーモアがあるところが、俺と斗真が仲良くなった理由の一つなんだ。

翔「こら和!!」

智「大きい声出しちゃダメって言ったのに～。出来るだけ静かに、だよ」

それはわかってるけど…でもこれは、俺のせいじゃないし…
そんなに怒らなくても…

翔「斗真とちゅーなんてダメに決まってるだろ!!」

智「あ、そのことで怒ってたの。相変わらずだね～翔は」

でた、翔にぃの家族大好き発言。
真剣な顔で言うから、ネタなのか本気なのかよくわからないよ。

斗真にも笑われちゃって恥ずかしい…

でも。

翔「なに、和。眠たいの?」

和「んふふ…」

でもね。そんな翔にぃが俺は好き。

隣に座る翔にぃの肩にコテンと頭を乗せてみる。
言葉にはしないよ。俺今、声出せないもん。

でもきっと、心で伝わってるよね。