ガラガラ声 6 (和) ページ18
翔Side
夏風邪を引いた時に咳が酷かったから、それで喉を痛めたんだろう、って。
俺らはそう思ってたんだけど。
でも和が言うには、異変に気づいたのはそれより少し前のことらしい。
智「耳鼻科に行かなきゃとは思ってたんだ?」
和「うん…」
智「そっか。偉いね」
和「ん…うーん…」
智「ふふ、微妙な反応。
和の頑張りはわかってるし、僕も翔も怒ったりしてないから。
呆れてもいないよ」
和「ん…」
ぽつりぽつりと話しだした和の声を、智にぃがゆっくり聞いてくれている。
こういう役割は俺より兄貴のほうが適任だ。
小さくなっている和が何に怯えているのか。
黙っていたことを怒られると思っているのか、続く症状の原因がわかっていないことが怖いのか。
まぁ多分両方なんだろうけど、うつむく目の前の弟は不安でいっぱいだろうから、いらぬ心配は一つずつ消していってやりたい。
智「喉、痛くはないの?
声がかすれたりとか、出しづらかったりとか、それだけ?」
和「んぅ…」
智「んぅ〜、ふふ。無口になっちゃった」
和の真似をして唇を突き出した智にぃが、笑いながら手を伸ばして尖った唇をプニプニとつまむ。
「やめろやっ」って威勢よく言ってくれたらいいんだけどね。
反応する余裕もないほど気持ちが暗くなっている和はされるがままだ。
智「明日、仕事が終わった後に耳鼻科に行ってみようか。
斗真に診てもらう? 僕もついていくから」
翔「うん、そうだね。
一人で行くのは勇気がいるけど、智にぃがついててくれれば大丈夫。ね、和」
声がかすれてるってことは声帯辺りを詳しく調べることになるだろうし、だとするとファイバースコープ入れる可能性が高いわけだし…
それに慣れている斗真に任せるのが一番安全だって思うけど。
でもそれは、和的には避けたいことなんだろうなぁ。
和「…だ」
智「嫌だ? やっと喋ってくれたと思ったのに〜
そっか、嫌かぁ」
和「…とにぃ、やって…?」
そうだよな、智にぃに診てもらいたいって思うよな。
しかも「ここでがいい」っていう無茶ぶり付きだ。
さすがに何の道具もないここでは無理だろ〜って思うけど、今は和の言葉を否定しないようにしているらしい。
智「じゃあちょっと診てみようか?
上向いてあーして?」
診断する上では意味のないことなのかもしれない。
それでも、智にぃが手のひらを頬に当てただけで表情が緩んじゃうんだから。
和にとっては意味のある大事な時間なんだろうなって思うよね。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
