伍拾伍の目 ページ5
気づけば暑い夏が終わりかけて布団から起き上がることが出来るようになった。
時には厠に行くために立ち上がってゆっくりと移動して、時には一人で体を洗うまでそれなりに支障は出なくなった。
しかし、失われた左腕の存在は大きかった。
時々欠損した腕が痛みを思い出しては苦しくて夜中に何度も目を覚ました。
先日あの隊士が義手を渡してきたが一度もつけたことはない、すぐに受け取りを拒否したから当然である。
｢…散歩してくる。｣
｢では同行します。｣
毎日しつこく自分の後ろに着いてくる隠と呼ばれる者たちが嫌で仕方がない。
庭を歩くだけで斜め後ろに隠と呼ばれる監視係が必ず着いてくる。
｢ねぇ、なんでいつも着いてくるの？｣
｢命令ですので｣
気味が悪い
なぜ人に言われた通りに行動するのを良しと思うのだろう
これが自分の選択と本気で思っているのか
だが命令したのはあの隊士だろう
皆から藤柱と呼ばれる彼の名前を知らないため自分もまた彼を藤柱と呼ぶ以外に選択肢がないのだ。
｢(無一郎…一体何処にいるんだ？)｣
思い浮かぶのは唯一の血族である双子の弟ばかりで不安ばかりが膨らむ。
何度も外を出入りする藤柱や隠に弟の行方を問うた所で結果は同じ、はぐらかされて終わるのだ。
ならば自分がこの敷地から逃げ出せばいつかは会えるはずだ。
自分でもなぜこのような無謀な考えに至ったのかは分からないが、内心は焦っていたのかもしれない。
｢なっ…！
お待ちください!!｣
勢いよく屋敷を飛び出して道なりに駆け抜ける
走って走って走り続けて
たどり着いたのは大きな屋敷の塀の前だった。
つい先程まで自分がいた屋敷とは比べ物にならない敷地の広さを感じるそれは、小さな小屋で過ごしていた自分にとって息を飲むものだ。
｢誰？｣
｢…っ！｣
聞き覚えのある声に振り向けば、そこには自分の片割れが虚ろな目でこちらを見ていたのだ。
ようやく会えた
ようやくたった一人の血族の無事を確認できて笑みがこぼれる
｢無一郎…！｣
｢…なんで僕の名前を知ってるの？
何処かであったことある？｣
それは、記憶を保持している兄からすればあまりにも残酷な現実だった。
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シロヌコ(プロフ) - サイステ先輩が推しになりそうというか推しましたありがとうございます (2022年12月2日 16時) (
レス) @page47 id: 09da8bad9a (このIDを非表示/違反報告)
何でもないひとだよぉ(プロフ) - なんか面白そうなタイトルじゃんと思ってみたらなんなんですか…くそおもろいじゃないですか！応援してます。更新これからも頑張ってください！！！！ (2022年11月16日 21時) (レス) @page44 id: 9cea2e06fa (このIDを非表示/違反報告)
オタク - 読む前「何か面白いタイトルやー」読んだあと「は？面白すぎんだろ。、、天才か？」サイコロステーキ先輩だって事忘れる面白さ。これからも頑張ってくだせい！！ (2022年10月9日 19時) (レス) id: da08d8ca50 (このIDを非表示/違反報告)
美奈(プロフ) - 成り代わりが読みたくて探していたらまさかのサイステ先輩の成り代わりに驚き、読み始めたら面白くて止まらず、ここまで読んでしまいました…控えめに言って神…続き楽しみにしてます！ (2022年8月6日 21時) (レス) @page18 id: 654a1bab90 (このIDを非表示/違反報告)
ロックマ - この作品最高です!!これからもがんばってください!!!!! (2022年7月13日 23時) (レス) @page2 id: 7ddd684455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：またたびはまた | 作成日時：2022年7月12日 20時
