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気を利かせてかは知らんけど、坂田が 俺ちょっと用事あるから行くわーなんて 病室を出ていって、俺とAが二人取り残された。
彼女からしてみれば、知らない人と二人にされるなんてだいぶ気まずい状況になっているわけで。
軽く坂田に恨みを持ちながらも、沈黙をどうにかしようと口を開けたり閉めたりを繰り返す。
けど、今までどうやって彼女と話してきたっけ なんて思ってしまうぐらいには何も思い浮かばなくて 俺は諦めて口を固く結んだ。
それに気付いたのか否か、彼女の方から あのー…と探るような言葉を発した。
「 ん? 」
「 志麻さん…は、」
「 うん 」
「 私の、何だったんですか? 」
「 は…? 」
質問の意図が良く分からなくて首を傾げると、苦笑いを浮かべながら彼女は言葉を続ける。
「 先生に調べてもらったら、少し記憶障害があるって言われました。多分、志麻さんのこと覚えてないのってそのせいなんだろうなって思って… 」
「 …うん 」
「 ケータイとか、ほんまは見て調べたいんやけど 親が使ったらアカンとか言うてきて調べられなくて…だから、志麻さん本人に会ったら分かるかなって 」
分かんなかったんやけど、ねー…
そう言ってぽりぽりとほっぺたをかく彼女は、次第に固さも無くなってきて…どんどん俺が好きだった彼女に戻ってきていて。
でも、彼女は俺のことなんて覚えてないし なんなら当たり前やけど好きでもないから、迂闊に変なことも出来なくて。
でも、やっぱ腹立つし ほんの少しだけ意地悪してやろうなんて 気持ちが、出てきて。
そっと、彼女の手を握った。
「 えっ…と? 」
「 手、握ったり…しとった関係? 」
「 ……何それ、結局どういう関係なん…? 」
「 …そういう関係だよ 」
「 いや全くわからんしっ!! 分かりにくすぎやわっ 」
「 はははっ(笑)そうそれ、ツッコミよう入れてもらってたわ 」
離しがたい気持ちに蓋をして、彼女の手を離して。
彼女の目なんか見て嘘は言えへんから、外の景色だけじっと見ながら ええ友達やった…って所かな、とだけ。
そういうと彼女は、ふーん… と興味なさげに返事をする。
なんやねんその返事、とちらりと彼女に目をやると にっと楽しそうに 笑って。
「 私、アンタみたいなイケメンと仲良かったとかやるやんっ? 」
その笑顔に、気持ちが溢れて痛くて 堪らなかった。
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ざゆ(プロフ) - 本当に本当に本当に最高でしためちゃくちゃ泣きました!!こんなすてきなさくひんをありがとうございます、また何回も読みに来ると思います本当に大好きです!! (2020年8月11日 1時) (レス) id: d0019edafb (このIDを非表示/違反報告)
空っぽのコップ(プロフ) - センラさんに正直に話す所から涙が止まりませんでした。こんなにも素敵な作品を作って下さってありがとうございます! (2019年6月28日 7時) (携帯から) (レス) id: 7582f8fce2 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - ぷりん畑さん» お返事遅くなって申し訳ありません。私の作品なんかで涙を流してもらえるなんて光栄です!ぜひrecoupを聴きながらまたこの作品を呼んでもらえると嬉しいです! (2018年6月7日 3時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん畑 - お友の紹介で読み始めたんですが、夢主事故った位からずっとうぅうぅ泣きながら読んでました。またrecope聴きたくなりました。大好きです。 (2018年5月25日 22時) (レス) id: ddc5e690a1 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - 葵香さん» 素敵な曲ですよね、あの曲私大好きです(*´ω`*)ご覧いただきありがとうございました! (2018年1月18日 1時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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