標的139 ページ46
「──なるほど、それでツナさんとギクシャクしてしまった、と……」
私の言葉に、ハルがううん、と唸る。
……結局、全て話してしまった。
口をつぐんだ京子とハル。
どこかいたたまれないのを誤魔化すように、私は「たはは」と笑って見せた。
やっぱり、こんなの話したところで……ふたりを困らせるだけだったな。
昇降機の作動音だけが虚しく響く。
何か言わなきゃと、口を開きかけた──その時だった。
「──Aくんは、優しいね」
ぽつり、一言。
呆気に取られたまま、目を丸くして京子を見やる。
「……え」
「だって、全部ツナくんを想ってのことでしょ？」
「っ……でも、」
よみがえるのは、廊下で見たあの表情。
思いやりと無神経は違う。
傷つけてしまったら、それは……優しさなんかじゃない。
「ツナは……」
「大丈夫ですよ」
言いかけたのをさえぎって、ハルもまた笑う。
「その気持ちは、ちゃんとツナさんに伝わってます」
その言葉は、なぜだか。
無性に──安堵してしまうような。
「……そう、かな」
ぽつり呟いた言葉に、頷き返すふたり。
気づけばいつの間にか、少しだけ心が軽くなったような気がして。
……そうだと、いいなぁ……──
「でもまぁ、避けちゃったのはバッドでしたね！」
「そこは容赦ないんだ！？」
ふいに痛いところを突かれ、私は思わず頭を抱えた。
ストレートな指摘に、ぐうの音も出ない。
くそぅ、さっきちゃんと話せていれば……こんなことには……
「心配ご無用です！後でハルたちもついて行ってあげますから！」
「いいいや大丈夫！大丈夫だから！ね！？」
またしても熱意に満ち溢れるハルに慌てる私。
そんなやり取りを見ていた京子が、ふと笑いをこぼした。
「京子？」
「ふふ、不思議だなって。
なんだか、あんまり男の子と話してる感じがしないの」
──。
一瞬、頭が凍りつく。
私が口を開く前に、京子は何かを察した顔で慌てて両手を振った。
「あっ、変な意味じゃないよ！Aくんがその、とっても話しやすくて」
「むむ、確かに言われてみれば……今まであまり話す機会がなかったですけど、Aさんて意外と気さくな方なんですねっ」
「あ……ありがとう。そう言ってくれると、嬉しいよ」
……そうだ。
私、男装してるんだった。
──早く言わなくちゃ、本当のことを。
到着のベルが響く。
避けては通れぬ道を見据えながら、私は遠く目を伏せた。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~！近いうちに続編公開するのでお待ちください！ (6月14日 12時) (
レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです！続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…！コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ！！！(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです！！ご馳走様です！！続き早く読みたいです！！おかわりください！！！！！ (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜！！^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…！ (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オウリ | 作成日時：2020年11月29日 23時
