標的115 ページ22
思いがけず武器を手にした私は、しばらくの間、それをまじまじと観察していた。
「すごい、10年経ってるのに……錆ひとつない。パーツに異常もないし、これなら実戦でも問題なく使えるよ」
「当然だ。誰が整備してると思ってる」
私たち暗殺者にとって、道具は命だ。
少しの不調が命取りになることだってある。
「お前の銃と要領は変わらねぇ。炎を込めて撃つ──それだけだ」
……正直助かった、手ぶらでこちらに来てしまったから。
ましてや得意の銃なんて願ってもいない。
だけど。
「……あの、ボス」
「あぁ？」
先程から感じていた疑問。
この部屋に入って──未来のボスと初めて会った時から、ずっと。
意を決して、口を開く。
「私のこと……き、嫌いなんじゃ、ないの」
……自分で言うのもどうかと思うけど。
争奪戦での衝突がよみがえる。
ボスは確実に、私のことを良く思ってなかったはずだ。実際ボロカス言われたし……
なのに、どうして……助けるようなことをするんだ。
何より──私に向けるその目が、違う。
……あの時の冷たい視線とは、確かに、何かが。
僅かな静寂の後、ザンザスはおもむろに口を開いた。
「──弱ぇ奴は、無価値だ」
思わぬ答えに、一瞬呆気に取られる。
聞き返す間も与えぬまま、彼は続けた。
「戦闘力の話じゃねぇ。己の意思を貫き通す覚悟もねぇカスは、かっ消してやりたくなる。だから、テメェも切り捨てた」
……私が、どちらも手放せなかったこと。
ボスは、そんな私の弱さを見抜いていたんだ。
「……だが」
少しの沈黙。
そう話す彼の視線は、自らの右手に注がれている。
「あの日、オレは敗けた。テメェは証明したんだ──自らの価値を」
そこに、かつて奪い合ったリングはなく。
代わりに──暗殺部隊ボスの証である、ヴァリアーリングが光っていた。
「そのテメェが何もできず、無様な姿を晒すのは許さねぇ」
固く握られた拳。
それは憎悪でも、後悔でもなく。
「手段はやった。その価値を、証明し続けろ」
息をするのも忘れ、ただ目を見張る。
……こんなこと言ったら、今度こそかっ消されるだろうけど……
ボスのことだ。
敗北なんて、絶対に認めないと思ってたのに。
「……何が可笑しい」
「ううん……ボスってやっぱり、ボスなんだなって」
「あ？」
今一度、銃を握りしめる。
──ボスに託されたんだ。絶対、負けるわけにはいかないな。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~！近いうちに続編公開するのでお待ちください！ (6月14日 12時) (
レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです！続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…！コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ！！！(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです！！ご馳走様です！！続き早く読みたいです！！おかわりください！！！！！ (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜！！^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…！ (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オウリ | 作成日時：2020年11月29日 23時
