朝はもう来ない ページ6
「この力は償いで、神の温情なんだ。僕らは永遠に生き続けて、世界を守らなければならない。そのための力でもある」
「永遠に」
「そう、永遠に。世界が僕らで僕らが世界だ。世界が滅びれば僕らは死に、僕らが死ねば世界は滅ぶ」
どうだろう、手伝ってくれないだろうか。
シュイの声が不安げに聞こえた。
「私は何をしたらいいの」
「やってくれるのか」
静かに問いかける。
「物語の主人公にずっとなりたかったの。夢を叶える最高の機会よ。やりたいに決まってるわ」
少女の返事は単純明快なものだった。だが、彼女はまだ幼い。
「僕に仲間になれば、君は永遠で不老の体を持つ。それでもいいのか」
「なんでダメなの。私は死にたくないもの、嬉しいに決まってるわ」
シュイには彼女の未来が予測できた。いつか、彼女はきっと...。それでも止めないのは彼の我儘か、彼女の運命か。
「まずは、神と契約してほしい。神使になれば、神に準ずる力が与えられる」
「火を操れるのは力じゃないの」
「さらに強い力だ。今の力は、ただの目印のようなものでしかない。それに、神使としての姿も取れるようになる」
こんな風に、とシュイが指を鳴らすと、そこに蛇の絡んだ亀がいた。北の街の守護神の姿だ。次の瞬間には、蛇を絡ませたシュイ。瞳と銀冠が蒼く光っていた。光が消えると、そこには人身のシュイ。
「君は火だから、南の守護神だろう」
シュイは言った。
「覚悟はいいか。契約は破棄できない。戻るなら今だ」
「大丈夫。お願い」
目を閉じて深呼吸。 覚悟を決めて目を開くと、シュイは小さな箱を１つ取り出した。中に収められた美しい腕輪。
空気が変わった。
「繰り返して」
少女に囁く。
「神様。我らの国に火をください」
歌にある、氷の国の王の祈りの言葉。
腕輪が紅く染まった。宙に浮き、少女の腕に収まる。光は一点に収束し、紅玉が腕輪にはまっていた。
「これでいい。契約はなされた。よろしく...」
「リアンよ」
「よろしく、リアン。僕はシュイだ」
数日後、二人の旅人が街を出た。一人はフードを目深に被った青年。もう一人は、まだ年端もいかない少女だった。
続く
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作者名：和人 | 作成日時：2020年2月15日 1時
