朝はもう来ない ページ2
落ちたフードもそのままに、無表情のままピクリとも動かないシュイを、男どもが取り囲んだ。
「こいつで間違いないか」
リーダー格が傍の男に聞いた。
「ええ。間違いありません」
シュイは一言も喋らない。下卑た笑いを浮かべた男の腕が、彼を捕らえた。
「洪水が起きた街に男が現れて街を救ったと言う噂を聞いたことがある。旱魃が起きた村では見知らぬ男が新たな川を作ったらしい。」
リーダー格の男はシュイを探るように見た。しかしシュイは反応しない。無表情を崩さない。
「２つのの噂には共通点がある。一つ、水が関係している。2つ、男は銀冠を被っていたらしい」
初めてシュイは反応を示した。チラリと男の顔を見上げる。腕に徐々に力がこもる。気付かずに男は続けた。
「お前がヘドロだらけの水路を綺麗にしたところをこいつが見た。綺麗な銀冠もしているじゃねえか。お前が...ぐあ」
言いつつ銀冠を弾こうとした男の体が吹っ飛んだ。柱に背中を打ち付ける。店主はいつのまにかカウンターから消えていた。
「これに触るな」
ひ、と男達の喉がなる。誰一人動けなかった。身動き一つ許さない程の殺気がシュイから立ち上っていた。
「銀冠は、我らの罪の証であり、神の恩情である。終わらぬ命を継ぐ覚悟がないならこれに触るな。あんたのために言っている」
殺気が消えた。
「店主、これで情報は買えるか」
気づけば戻っていた店主に問いかける。
「足りねえ分はお前についての情報で上乗せしてやろう。探している奴はこいつだろう。」
店主の後ろからひょっこり顔を出したのは、一人の少女だった。
「お兄さんが私を探してるの」
「なるほど。それで高いということか」
シュイは少女に目を合わせた。首をかしげる彼女に問いかける。
「君に、話がある。ここではできない話だ。どこかで話せないか」
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作者名：和人 | 作成日時：2020年2月15日 1時
