152 ページ9
.
優太さんと夜ご飯を食べに行く約束をしていたから、授業が終わったあと帰らずに優太さんを待っていた。
昨日、課題の提出に終われて寝るのが遅かったからか次第にうとうとと眠気が邪魔をしてくる。
少しだけ寝てしまおうか、と目を瞑りながら迷っているとき
近くに座っている人たちのガールズトークが聞こえてきた。
なんとなくそれが気になった。本当に、なんとなく。
「あの人もかっこよくない？ほら、なんだっけ。2年の…」
「あ〜平野先輩？」
咄嗟に目が開いた。
平野先輩。
たったそれだけのワードに強く反応を示してしまうのはそれが紫耀のことであると分かったからだろうか。
「そー！平野先輩！ほんとイケメンじゃない？」
「ね〜。私も遊ばれたい」
「来るもの拒まずって噂だもんね」
勝手に人の会話を聞き続けるのはよくないと思いつつも眠気はいつの間にかどこかに行ってしまい、どんどん彼女たちのやりとりに意識が行ってしまう。
「あ、でも最近はそーゆーの断り続けてるってサークルの女の先輩が言ってた」
「そうなの？なんでかな。もしかして本命ができたとか？」
「わ〜ありえそう」
断り続けてる？なにそれ。何があったの？
たしかに後期に入ってから紫耀の隣に女の子がいるところを見たことがない。
彼女たちが話しているとおり、本命ができた？
いや、本命なら元々いるじゃない。ミユさんが。
てことは
もしかして、ミユさんと何かあった？
思い出すのは、廉くんと喧嘩をしたミユさんを心配して紫耀が会いに行った日のこと。
悔しくて悲しくて胸が張り裂けそうになったあの日。
あれから二人に何かが起きたのかもしれない。
例えばミユさんと廉くんが別れて、紫耀が改めて告白をした。とか。
上手くいったのかな。
ミユさんとの関係がいい方向に進展したのなら、もう遊びでストレスを発散しなくてもいいもの。
本当のことは分からないけど、もしそうだとしたら“よかったね”って思えばいいの？
報われてよかったね
って。
そう思えたら、私も新しい恋に踏み込める？
やだな。本当に。
どうしていつも私の心を乱すのは紫耀なの？
いつになったら変われるの？
早く優太さんに会いたい。
優太さんが側にいてくれなきゃ、今日はもうダメかもしれない。
ふとした時の紫耀の存在が大きすぎて苦しい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1864人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
