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「うん。でも戻れるなんて思ってないから…。紫耀に直接会って思いを伝えられたらそれでよかったの…」
私は立ち上がってこの場を去ろうとした。
「待って」
「…それで？伝えたらそれで終わりなの？」
「えっと…」
何を言われるのかが分からなくて目を泳がせていると、紫耀が私に近づくように足を動かす。
すぐに手を掴まれてしまった。
「…今日はちゃんと俺の話も聞いて」
紫耀に促されるまま、また元の位置へ。
さっきまでと違うのは紫耀との距離だけだ。
「なに…？」
「前に言ったこと、ほんとだから。
俺も好きだよ」
「何言ってるの…」
フラッシュバックした。
紫耀に偽りの想いを伝えられたことが。
「また信じてくれない？これ嘘じゃないから」
紫耀に掴まれた腕を振り払おうとした。
「お願いだから逃げないで」
「やだ…離して。なんで好きなんて言うの。紫耀に言われても嬉しくないって言ったじゃん…」
紫耀の力は強まるばかりだった。
「本気で好きなんだって…。どうしたら信じてくれる？」
「無理だよ…。だって紫耀はミユさんが好きなんでしょ」
悔しくて泣きたくなるくらいに紫耀はミユさんが好きだった。私はそれを忘れられない。
「…たしかに前はそうだったけど今は違う。
気づくのが遅かった。ほんとはもっと前からAのことを好きになってた」
「そんなこと…」
あるわけないでしょ。
紫耀が私を好きなるわけないじゃん。
「もうミユのことは好きじゃないよ。
俺はAだけだよ」
「待ってよ…分かんないよ」
嘘だと思ってたのに、あのときの“好き”だという言葉は本当だったの？
混乱してしまう。
偽りなんかじゃなかったの？
「そりゃ信じられないよね。たくさんAのこと傷つけてきたし、泣かせてきたから。
でも信じてもらえるように俺毎日伝えるよ。もう、悲しませない。
だから俺の側にいてほしい」
なんだろう。溢れてくる涙は何を表すのだろう。
ちゃんとは分からないけど、次から次へと溢れ出る。
「…俺の気持ちは迷惑？」
「違う…。びっくりしちゃって。
紫耀が私を好きになるなんて夢みたいだから。けど…嬉しい」
「信じてくれるの…？」
信じるしかない。大好きな人だから信じたい。
もう疑いたくない、そう思った。
「うん…」
純粋に気持ちを受け止めることが大事なんだと思った。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
