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＊
俺が介入する度に、
Aが紫耀を忘れて前に進もうとする度に、
紫耀の存在はAの中に深く根付いていくのかもしれない。
泣いているAを見たらなんて声を掛けるのが正解なのかが分からなかった。
結局俺はどうするこもできなくて、不甲斐なさと悔しさを抱えたままその場を去った。
その日の講義を終えてやっとAの元へと行くことができた。
「どう？大丈夫？」
これでもよくなったんだと思うけど、
ベッドの上のAは顔色が悪かった。
「大丈夫ですよ」
Aは伏し目がちにそう答えた。
目を合わせないところが何か隠し事をしているように思えてしまったんだ。
さっきまで泣いていたくせに何が大丈夫なんだ。
どうして俺の前では泣かない？
“紫耀のことで泣くのは今日が最後です。
もう泣きません”
あの日、紫耀を好きでいることを辞めると言った日のAの言葉を思い出した。
そんなこと守らなくていいんだよ
そう言ってあげたかった。
だけど何も言えなかった。Aの強がりを自分のために正当化しようとしていた。
Aが俺に隠し事をしたり自分の本心を無理矢理偽ることがずっと気がかりだった。
けど俺自身、
心で思っていることをAに全て伝えられていたかって聞かれたら頷くことはできない。
失うのが怖くて気づかない間に逃げようとしていたのかもしれない。
こんな俺じゃ駄目だよ。
何だって受け入れるなんて、俺にはまだできなかった。
何日か経ったあと、
大学で紫耀のことを見かけた。
紫耀は一点を見つめていた。
泣いてしまいそうな、苦しそうな。
けど、人が愛しいものへ向ける目を紫耀はしていた。
目線の先にいたのはAだった。
なんだよ。
なんとなく気づいていた。気づかないようにしていたけど、やっぱり紫耀はAのことを大事に思っているんだ、って。
確信は持てなかったけど、本当にAのためを思うなら俺はそのことをAに伝えてあげた方がいいと思った。
だけど伝えるのも怖かった。
自分の狡さ、不甲斐なさに耐えられなくなってお酒に頼ってしまった。
結果としてAに嫌な思いをさせた。
これより先のことは考えられなかった。
Aのことを思ったら俺のすることは１つだった。
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作者名：來
| 作成日時：2020年12月13日 19時
