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体育館の床にボールが当たる音がなり続ける。西谷はリベロらしく、反対側のコートに立ってボールを拾い続けている。
彼女は、きっと
千鳥山の西谷
確か、去年の中総体でベストリベロ賞獲っていた。
それを知っているほど、昔はあれだけ熱心だった。
何を考えているのだろう、とAはハッとすると、やっぱりバレーは見ない方がいいと思い、また、うつむいた。
今日だけで何度目かわからないため息をつく。でも、ここに思い出すようなレベルの人はいない。それだけ、安心した。
｢｢｢ナイッシュー!｣｣｣
はて、と顔を上げた。いつの間にかサーブ練習は終わっており、スパイク練習に移っていた。
ボールをあげて、トスをあげて、スパイクを打つ。
『ぁ……ぁ……ぁ、ぁ……』
大きく目を見開いた彼女の口から情けない声が出る。トスをあげる、菅原と、スパイクを打つ、東峰を。
重ねてしまった。
トスをあげる菅原先輩と、あの人を。
一生懸命練習する、あの人を。
＿＿＿＿＿＿＿＿、あの人を。
彼女は急いで舞台から飛び降りると、そこから一目散に逃げ出した。
ちゃんとわかっていた。あの人と、菅原先輩は全然違う。それでも、重ねてしまった。思い出してしまった。
外の空気を吸って、深呼吸する。早く終わってほしい。早く帰りたい。早く、早く、早く、早く、早く。
残りの時間、彼女の頭の中を占めていたのは、早くここから出ていきたい。ただ、それだけだった。
そこからは早くて、あっという間に1日目が終了した。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2021年7月29日 15時
