羽が11枚 ページ14
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澤村に呼ばれた縁下。ハイッと返事をすると、すぐにAたちのもとにやって来た。澤村が縁下に頼む。
｢すまんが縁下、マネージャーの仕事や、部室、あと、道具類の場所を教えてやってくれないか｣
｢わかりました｣
『縁下、よろしく』
｢ん、了解。それじゃあ案内とかするからついてきて｣
体育館の外は、冷たい北風が吹いて少し肌寒い。しかし、体育館内のこもった熱気で少し暖まっていた体には体温が冷やされるようでちょうどよかった。
体育館を出てから、縁下は
｢えっと、倉庫は体育館内にあっただろ、｣
気付いたか？とAを見て聞いてくる。その質問に、彼女は黙って頷いた。
｢よし。次は部室か。俺たちの使ってる部室があるのは…｣
少しずつバレー部のもの、場所を知っていく。1週間だけ、1週間だけ、と思っていても、Aはどうしても今すぐ忘れ去りたい衝動に駆られる。
「部室はここ。部室棟の2階ね。強かった頃の名残で広いところを使わせてもらっているんだ」
部室棟に到着し、案内してくれる彼から説明をされる。Aは彼について部室に入っていった。
｢散らかっててすまん。まあほとんど見てわかるようだけど、ボトルはここで、タオルはそこ。ボールは……｣
彼が1つずつ、場所を一通り教えていく。Aは別に物覚え後悪い方じゃない。それでも、❰バレーに関係あるもの❱が、目の前に、同じ空間にある。ただそれだけなのに、今すぐここから出たいと、少し吐き気を覚えた。
顔色が悪くなったのだろう。彼の声が聞こえる。
｢大丈夫か？ちょっと外に出るか｣
たくさん言い過ぎたかな……さすがにいきなりは覚えられないか……と悩む彼に、
『ありがと、縁下。大丈夫だから練習に戻って』
とAは声をかける。
｢え、でも、体調悪そうだし、初めてのマネの仕事は疲れるから手伝うよ｣
それに、仕事教えないと……と彼は渋る。
『いいから、大丈夫だから、練習戻りな』
それに友達の手伝ったことがあって仕事はわかるから、と嘘をついた。
｢でも体調が……｣
『少ししたらもう大丈夫になったから』
心配する縁下を部室から追い出すように外に出し、Aも外に出る。そのまま2人、階段を下る。ほら、早く、と急かすと、根負けしたのか渋々体育館に戻っていった。
さて、どこから、何から手をつけようか。とAは後ろを振り返った。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2021年7月29日 15時
