月華ハ刃ヲ隠シテイル ページ32
×××
声すら出なかった。
吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた
身体中の骨という骨が砕け、全身が鉛になった様な感覚が襲う。力が入らなく、中島の身体は地面に崩れ落ちるかと思いきや、フィッツジェラルドの手が髪を鷲掴みにした。
「我々が君に懸けた
冷たく淡々とした声が、今にも意識を失いそうな中島に浴びせられた。
口の中に鉄の味が広がり、気持ちが悪い。全身も痛く、死にそうだったが
「落ち込むな
これじゃ......
前と同じだ......
薄れゆく意識の中、彼は自分の不甲斐なさに胸が苦しくなる。居場所を与えてくれた仲間達、中島は自分に善くしてくれた彼等の役に立ちたかった。
其れが今や、組合の団長に捕まり手も足も出ない状態。
僕は又 皆に......
迷惑を掛けてしまう。
全てを諦めそうになった時だ。
「待って」
静かな、だけど大きく凛とした声が聞こえた。
フィッツジェラルドの耳にも、中島の耳にも、其の声はハッキリと届く。
鉄橋を渡って来る人影が見え、中島は其方に何とか首を動かした。
「.........ッ!!」
目を見開いた。
橋の上に立っていたのは、和装に身を包んだ小柄な少女。艶やかな黒髪を風に靡かせ、
中島が驚くのも無理は無い。其の少女は、行方不明になっていた『泉 鏡花』だ。
彼女の姿を見たフィッツジェラルドは、「おや 君は確か......」思い出そうと、中島の髪を掴んでいた手を離し、少し考える仕草を見せる。彼女が鉄橋を渡り切った時、漸く思い出したのか、指をパチンと鳴らした。
「マフィアの下級構成員だな。報告書では行方不明とあったが?」
「違う 私の名は鏡花。探偵社員......宜しく」
泉の表情は変わらなく、簡単に自己紹介を済ませた。
次の瞬間、空気が変わった。
フィッツジェラルドは咄嗟に避けたのだが、喉に小さな刀傷が出来る。
泉が一瞬で間合いを詰め、懐に忍ばせていた刀を抜いたのだ。間一髪の処だった、彼女の殺気に気付くタイミングが後一歩でも遅れていれば、確実に命は無かっただろう。
「何という野蛮な国だ......」
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時