6話 ページ8
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小さい頃の夢を見た。
家族が暖かくて、食卓には笑顔に満ちている。
呼べば優しく微笑んで返事をしてくれて、
話し掛ければ耳を傾けてくれた。
そんな、何でもない毎日がとても楽しかった。
両親が珍しく休暇が取れれば、家族三人で仲良く手を繋いでAが行きたいとこに何処へだって連れていってくれた。
家路に着くときには、お父さんと感想を語り合って偶にぶつかって熱弁しあったり、それを優しく微笑みながら見守るお母さん。
日常に過ぎないそんな毎日が幸せだと感じていた。
温かくて、優しくて、笑顔溢れる毎日が、大好きだった。
「んぅ…?」
けたたましい目覚まし音で意識が覚醒した。
Aの頬が僅かに濡れて湿っている。
夢を見て、泣いていたのだろうか。
「うっ…うぅ」
さっきの夢を思い出して嗚咽を漏らした。
やっぱり幸せな日々は戻ってきてほしい、仲良かった頃の家族に。
そんなの、A自身がどうこう出来る問題では無いことそんなのは理解している。
最初の頃、沢山沢山止めても全く止める気配はせずにもっと酷くなるばかりであった。
子供は所詮子供であって、やっぱり無力なのだ。どれだけ、両親の喧嘩に首を突っ込んでも両親は周りなど見てはいない。
朝から涙が溢れて止まらない。
Aの心情を表すかのように、窓の外は物凄いどしゃ降りだった。昨日の天気予報では晴れだと告げていた筈なのに。
顔を洗い、すっきりさせる。
涙で濡れた顔はどんよりと暗い、そんな顔を鏡が映し出している。
これから学校なのに、こんな顔をしていちゃ駄目だとAは頬を軽く叩きしゃきっとさせた。
リビングへと向かうと、テーブルの上に置き手紙が
「昨日は良く眠れたかい?
冷蔵庫の中に、お弁当と夕食が入っているからちゃんと食べなさいよ。
学校頑張ってね。
また来ます。祖母より」
Aが寝ている間に帰ったのだろうお祖母ちゃんが残していった置き手紙だ。
手紙からでも伝わるお祖母ちゃんの優しさが心に染み渡り、また涙が溢れそうになるのを一生懸命堪えた。
次お祖母ちゃんが来る日がいつかはわからないが、その日ちゃんと笑ってまた会えるように頑張ろうそう思い、学校の支度に取り掛かった。
「行ってきます」
ちゃんと無事に帰ってこれるよう祈りを込めてそう告げる。今日は生憎の天気だがお祖母ちゃんのお陰で少し心が晴れた気がする、少しだけどね。
今日一日はどんな日だろう。
Aは傘を片手に家を出た
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幸福林檎 - 心理描写もすごく上手くて、大好きな小説です!初めてとは思えない!応援してます(^ ^) (2018年8月21日 23時) (レス) id: c84f1b316a (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 天岸悠樹さん» はい!お願いしますね! (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
天岸悠樹(プロフ) - らそまるさん» やったあ!完成したら報告します! (2018年7月30日 3時) (レス) id: 2eadb8d21d (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 放射性アイソトープさん» 態々ご指摘ありがとうございました。作者らそまるの勘違いにて起こしてしまった間違いです。本当に感謝しております。 (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 黒羽さん» ほんとうですか!?それはとても嬉しいですね、これからもお付き合い願います (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らそまる | 作成日時:2018年7月27日 22時