98話 ページ2
.
「……闇に、好かれる?」
太宰が重いものを拗らせている、というところにも少し疑問は持ったが、闇に好かれる、という比喩にも気になった様だ
闇とは良く判らないし、好かれるっていうのも判らない
それがどうして中也にも太宰にも繋がるのかも全部判らない
頭に疑問符を浮かべるAを見て紅葉は微笑んだ
「意外と子供で察しの悪い娘なのじゃな。いや、鈍感と云った方が正しいか。お主も苦労しとるな、太宰」
「……別に、今のこれでも随分心地が良いので」
太宰は紅葉を睨んだ
Aに余計な事吹き込むな、と
だが紅葉はまだ何か云うつもりらしい
「先程も云ったが、お主は本来闇にいるべき花よ。闇の花は闇でしか憩えぬ。そこの太宰も同じじゃ。そやつも闇の人間。そして闇は光にも闇にも焦がれるもの……太宰はお主の闇を光で覆っている、闇の素質を持ちながら光をも持つお主に惹かれておるのじゃ」
「……太宰さんが……ですか」
「そうじゃ。中也はまた別の様じゃが……あれはあれで拗らせとる。中也を応援する身として黙っておこう」
中也も拗らせている…?
自分は彼らに何かしたのか?
そんなことを考えたが、何も思いつかなかったようだ
「鏡花にも、闇に完全に染まったお主を見せてやりたかった。どうじゃ?ポートマフィアを考える気はないかえ?お主はきっとマフィア内でも有数の人間となれる。最悪、幹部の座も狙える。太宰の代わりとして使うのもアリじゃな、とも考えておる。太宰の為に空けておいた椅子に座らせてもらえるだなんて、光栄な事じゃ」
「……それは、絶対にありませんので。私は探偵社でなければならないので」
「じゃが……お主は“人を切り捨てる”選択肢を、幾つか考えたのではのいのかえ?」
Aの瞳が大きく揺れる
少し力を入れて太宰の外套の袖を掴む
太宰はAを庇う様に位置を変えた
「太宰も過保護じゃのう……まあ良い。お主の仕事の記録は見た。入社試験後、初仕事では盗撮に殺害を重ねた男の確保、じゃった。男は脱獄後に数人の殺人をした。お主が男を捕まえる為、軍警と協力した時に発案した作戦が、“それっぽい生き餌を用意し、男を釣る”という作戦だった。反対意見はあったが、結局それが遂行された。結果として生き餌の負傷だけで済んだ。任務を達成する為に手段をも問わない。自覚しておろう?それがマフィア向きな人間であることに。その後は気をつけておったが……その面影は残っておる」
.
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ