綿菓子と香辛料 2

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泣いているのが恥ずかしくて、私はお店の外に出た。


少し頭を冷やそう。



別れを選んだのは、私の方だ。




ハンカチで涙を拭っていたら、ふわって、煙草の香りが鼻先をかすめた。




思わず隣を振り向いて、驚きのあまり息が止まりそうになる。




そこにいたのは、空に向かって煙を吐く、スーツ姿の玉森さんだったから。




声がでないように口元をおさえる私を、玉森さんがゆっくりと振り返る。




「A？」




驚いたのは玉森さんも同じだったようで、目を見開いて私のことを凝視している。





「・・・玉森さん」




「何してんの？」




「えっと・・・友達と・・・





言い訳をしようとしている自分に気づいて、何だか恥ずかしくなる。


言い訳をする必要もその権利も、私にはもうないはずなのに。




「合コンです」




「合コン？」



「はい。新しい出逢いを求めて」




「ふーん」




少しも動じない玉森さんにガッカリするのはお門違いだ。



だから少しでも残念そうな顔をしないように、私は必死で笑顔を作る。




「みんな楽しい人ばっかりで、ずっと笑いっぱなしで・・・





「じゃあ何で泣いてんだよ」





私の全てを見透かすように、玉森さんはそう言った。




「何で泣いてんの？」




玉森さんはいつの間にか、私の目の前に立っていて、ハンカチで顔を隠す私の腕をそっと外した。




「目、真っ赤だけど」




「・・・そうですか？」




「あ、しずくが溢れそう。落ちる落ちる。3・2・1・・・はい、落ちたー」




「私が泣くのを実況しないでください！」




「やっぱ泣いてんだ」





墓穴を掘る私を、玉森さんはバカにしたように笑う。




「お前、終電は？」




「今日は友達の家に泊まります」




「友達って、その人？」




「え？」




私の後ろには、いつの間にか沙絵ちゃんがいて、ニヤニヤしながら私の肩をバンバンと叩いた。



「もう、寄り戻したんなら言ってよ！心配して損したじゃない」




「え？違・・・




「今から2次会行くけど、Aはもういいわね？」




「違うの！沙絵ちゃ・・・




「じゃあAのこと、よろしくお願いします」




そう言って沙絵ちゃんは、私を残して行ってしまった。




「何かお願いされたんだけど」





呆気にとられたように、玉森さんが呟く。





思いがけない玉森さんとの再会に、気持ちは容赦なく高鳴って、私はやっぱり悲しくなった。

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