チョコレートと花束を(2) (ページ3)

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毎日毎日祈った。

二階堂くんのお父さんの転勤の白紙を。

二階堂くんが急にさみしがり屋を発動して、ご両親の転勤先についていくことを。

願って願って、しまいには黒魔術の本まで借りようとしたのに、現実は何も変わらなかった。

二階堂くんの両親は無事に引っ越しを終えたし、二階堂くんは私のお兄ちゃんの部屋だった場所に、自分の荷物を入れ込んでいる。

「見てないであんたも手伝いなさい！」

お母さんに叱られて、びくつきながら荷ほどきをしている二階堂くんに近づいた。

「・・・・あ・・・あの」

「ん？」

「何か・・・手伝うことはありますか？」

「あ、じゃあこの漫画本、そこの本棚に入れてくれる？」

「・・・はい」

二階堂くんが指差した段ボールから本を抜き出して、本棚に並べていく。

「ねぇ」

「・・・はい」

「何で敬語？同い年なんでしょ？何でずっと敬語で話すの？」

「・・・それは・・

「俺のことが怖いから？」

心の中で1秒間に1000回頷いたけど、現実世界の私は微動だにしていない。

肯定してしまったら、どんな難癖をふっかけられるかわからない。

「俺ねぇ、目付き悪いって言われるんだよね。真顔だと睨んでるように見えるみたいで」

「・・・」

「でもこんな顔してても全然怒ってないし、急にキレたりしないから安心して？」

そう言って二階堂くんは、大きく口を開けて笑った。

「・・・カワウソに似てる」

「え？」

「笑うと、カワウソみたい」

思わず口から出た言葉に、二階堂くんは顔をしかめる。

「あ、ごめんなさい！嘘です！」

「怒ってなーいよっっ」

話し方、子どもみたい。

学校での二階堂くんと、目の前にいる二階堂くんは、まるで別人みたいだ。

「今日からよろしく」

私の手を握ってブンブンと上下させる二階堂くんは、やっぱり子どもみたいに無邪気だった。