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2(宮田くん) ページ2

「紺野さん、こんなとこで何してるの?地元にいるんじゃなかったっけ?」



「昨日上京してきたの。こっちで、働きたくて」



「昨日?」



「でもさ、ちゃんと住所ないと働けないみたい。住むとこ決まってないのに」



「え?待って?社会人何年目なのかな?そんなの当たり前じゃん」



「お説教しないで。落ち込んでるんだから」



「落ち込んでる人が見知らぬ男の人と喧嘩する?」



「・・・だってムカついたんだもん」



「ムカついたからって・・・。殴られたらどうするの?」



「殴り返す」



「君ならやりかねないね」




紺野さんは昔から、自分の感情を隠さない。



そういうところが好きだった高校生の頃の自分を思い出して、少しだけ甘酸っぱい気持ちになる。




「じゃあ、俺は行くね?もう誰とも喧嘩しちゃダメだよ?」



子どもに言い聞かせるようにそう言って、俺は紺野さんに背中を向けた。




「みあた!」



名前を呼んで、紺野さんが俺の腕をぎゅっと握る。



「・・・・紺野さん」



「ん?」




「痛い!」



「あ、ごめん」



「握力100くらいある?腕が千切れるかと思った」




ジンジンと痺れる腕を摩りながら、紺野さんの言葉を待つ。




「紺野さん?どうした?」



「・・・・あの、無茶なお願いしてもいい?」



「ダメ!君の無茶は本当に無茶だから!」



「お願いお願いお願い〜!」




顔の前で手を合わせて、足をバタバタさせる紺野さんは、あの頃から全然成長していない。




「みあたの家に住んでいい?」



「無理」



「家が決まるまででいいから〜」



「バカじゃないの?」



「私がバカなことなんて、みあたが一番よくわかってるでしょ?」




わかってる。



きっとこのまま見捨てたら、なりふり構わず無茶なことしちゃうんじゃないかってことも。




「・・・・家、すぐに決めてね?」




「もちろん!」




そしてこの”もちろん”を、あんまり信用してはいけないということも。

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年1月16日 20時

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