チョコレートと花束を(S) (ページ3)

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「誰？泥棒？」

「・・ち・・・違います！あの、私・・・今日からここでお世話になる予定で」

「え？」

「・・・雨宮です。雨宮A。・・・あの、あなたは？”せんちゃん”さんの彼氏さんですか？」

「せんちゃんさんです」

「・・・え？」

「ここに住んでる、千賀健永。ミカちゃんからは千ちゃんって呼ばれてます」

「あの・・え？あれ？女性ではない？」

「そうですね。男性として産まれてきました」

ミカちゃん！！！！

一体これはどういうことなの？

「雨宮さん、ごめんなさい。俺、君が来ることすっかり忘れてた」

「・・・いないかもって」

「いたね」

「・・・はい。あの、一緒に住むのが・・・その、女性の私だって知ってましたか？」

「うん」

「・・・・私はてっきり、千賀さんは女性なんだと思ってて・・」

「あ、そうなの？あちゃー！じゃあいろいろ気になっちゃうよね」

「・・・すみません」

「大丈夫だよ、安心して？この部屋にトイレは3つあるし、バスルームも２つあるから。雨宮さんと俺のトイレとお風呂はそれぞれ固定しよう」

トイレ3つ？

バスルーム２つ？

大家族住んでなきゃおかしーでしょ。

「雨宮さん？」

「あの、私、本当にここで暮らしていいんですか？」

「もちろん」

「あの、私は別に家事とか得意な訳じゃ・・・

「違う違う。お手伝いさんが欲しいわけじゃなくて、一緒に住んでくれる人が欲しいんだ。だって広すぎない？ここ」

そう言って無邪気な笑顔を見せる千賀さんに、私はようやく安心した。

多分この人は、だだっ広いこの部屋で、誰かの気配を感じていたいだけなんだ。

「あ、でも、家事に関しては質問いっぱいしちゃうかも。初めての独り暮らしだから」

「わたしにわかることなら、何でも」

「ありがと」

「いえ・・・・あの、千賀さん」

「ん？」

「よろしくお願いします。今日から」

「こちらこそ」

優しい話し方。

笑顔を物腰も柔らかい。

「じゃあ、早速教えて欲しいんだけど」

「はい」

「お湯の沸かしかたって知ってる？」

「は？！」

「コンロにいっぱいボタンあって怖いんだよね。どれを押せばいいんだろ？」

「千賀さん以外の全人類が知ってますよ！」

「え？そうなの？」

何て危なっかしい人なんだろう。

こんな人が、一人で暮らせるとは思えない。