第九話『恋』(玉森くん) ページ44
自分の席に戻ると、隣で栗原がお弁当を広げているところだった。
「最近、自分で弁当作ってんだね」
「うん。おかげで早起きになった」
「何時起き?」
「五時半」
「おばあちゃんじゃん」
軽く俺を睨んで、栗原はスープジャーの蓋を開ける。
「何のスープ?」
「横尾さんに教えてもらったスープ。玉森くんも一緒に習ったでしょ?」
「うん」
「せっかく習ったんだから、玉森くんも作ったらいいのに。吉岡さんも喜ぶよ、きっと」
荷物をまとめて、二人で暮らした部屋を出た。
俺の持ち物は案外少なくて、「最初から出ていくつもりだったみたいだね」って、泣き腫らした沙弥にそう言われた。
「余計なお世話」
「ごめん」
「栗原は何でそんなに頑張ってんの?ずっとコンビニで買ってたのに」
「・・・横尾さんと約束したから」
「約束?」
「自分の身体を大事にするって」
「・・・やっぱちゃんとしてるな、横尾さんは」
栗原は今、横尾さんに恋をしているんだろうか。
健気に横尾さんとの約束を守るその姿が、学級委員だった頃の栗原に重なる。
「栗原」
「何?」
「体育祭で、一緒に走ったの憶えてる?」
「借り物競走?」
「うん。あの時、借りてくるものに、何て書いてあったか知ってる?」
「・・・学級委員」
”いちばん大切なもの”
って、そう書いてあったんだ。
いちばん大切だと思った栗原の腕を引いて走ったのに、簡単に手を離してしまったこと、今更後悔してる。
「ありがとね」
「え?」
「一緒に走ってくれて」
恋をしてたみたいだ。
あの瞬間も。
今だって。
俺はずっと、君のことが好きだった。
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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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