第一話『18歳・卒業の日』 ページ5
私は地元の大学に合格して、玉森くんは、東京の大学に合格した。
玉森くんが進学すると決めた時は驚いたけど、彼の進路が決まった時、私は、担任から深く深く感謝された。
卒業式はあっけなく終わったし、私は全然泣けなかった。
だけど、友達と写真を取って、再会の約束をして、みんな帰ってしまった教室から、未だに動けずにいる。
一年間、私の席は変わらなかった。
ずっと玉森くんの後ろに固定されたまま、彼の背中ばかり眺めていた一年だった。
振り向いて？
こっちを見て？
気づかないうちに、そう願っていた一年だった。
やだな。
認めたくないな。
・・・・知りたくない。
・・・気づきたくない。
一年かけて、玉森くんに恋をしていたなんて、今さら気づいても、どうしようもないのに。
惹かれていた。
日ごとに。
毎秒ごとに。
どうしようもなく、玉森くんに惹かれていた。
「何してんの？」
「・・・・玉森くん」
ネクタイも、ブレザーのボタンも、全部無くなってしまった制服を着て、玉森くんは立っていた。
「帰んないの？」
「・・帰るよ？」
慌てて荷物をまとめて、席を立つ。
明日からは、もう、玉森くんの背中さえ見ることはできない。
「・・・じゃあね」
「あのさ、俺には聞かないの？」
「え？」
「何してるの？って聞かないの？」
「・・・・玉森くんは、何してるの？」
「委員長を探してた」
「私？」
「お礼、言えてなかったから」
「・・・お礼なんて」
「ううん。ちゃんと言いたい。一年間、ありがとう。委員長がいたから、卒業できたし、進路も決まった。俺のこと、お世話してくれてありがとう」
やめて。
その笑い方は、私をダメにするから。
目尻を下げないで？
ゆっくり口角を上げないで？
私は泣いちゃうから。
玉森くんの笑顔に、私の想い出の全てが詰まっているから。
「泣くなよ」
「・・・・・・ごめん」
「握手」
玉森くんが差し出した右手を握る。
何度も何度も、玉森くんは繋いだ手を揺らした。
「バイバイ」
玉森くんが、そう言って教室を出ていく。
“またな“とは、やっぱり言ってくれなかった。
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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ；∀；)嬉しいです！ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (
レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです！マキさんの作品、本当に大好きです！！ (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした！展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています！ (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです！玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね！時間が経つのが早くてびっくりしてます笑！ (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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