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第四話『温かいポトフと冷製トマトスープ』 ページ19

それ以上、玉森くんは私を追及することなく、黙々とお弁当を食べ始めた。



私もサンドイッチを取り出して、食欲もないのに、それを口に入れた。



「栗原」




名前を呼ばれて見上げた先には、仏頂面の横尾さん。




「あ、また何か間違えてましたか?」




「そんなんじゃない。そんなんじゃなくて・・・これ」




「え?」




横尾さんが差し出したのは、見慣れない丸い形の筒。



「これ、何ですか?」



「知らねーのかよ!スープジャーだろ!」



「スープジャー?あ、温かいまま食べられるやつ?」



「・・うん」



「それで、これをどうするんですか?」



「食べるんだよ」



「え?」



「あ〜!イライラする!理解力のないヤツだな!スープ作ったから食えって言ってんだよ!」



「あ!はい!ごめんなさい。食べます!」



条件反射でそう答えながら、理解力のない頭で、ようやく気付く。



「・・・これ、横尾さんが作ったんですか?」



「そうだよ!」




「でも、何で私に?」



「栄養が足りてないから、情緒が安定しないんだよ」



「・・・あ」




そうだった。



昨日私は、横尾さんの前で泣いてしまったんだ。



「あと、栄養ドリンクのお礼」



「無理やり押し付けたのに」



「どうでもいいから、ちゃんと食えよ?」



「あの、ありがとうございます」




スープジャーを開けると、容器から温かな湯気が立ち上った。



「ポトフだ」




綺麗に切り揃えられた野菜が、見るからに美味しそうで、私はしばらく金色のスープを眺めていた。





情緒が安定しそうだな。





スープを口に運んで、思わず横尾さんを振り返る。



横尾さんが作ってくれたポトフは、まるで、優しいお母さんが作ってくれたような、温かな味がしたから。

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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年12月24日 1時

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