透き通る

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校舎を出ると、あたりは少し薄暗かった。


みっくんに叩き起こされてすぐに教室を出たから、頭の中はまだ少しぼーっとしている。




「澤木さん！」




ヒールの音を響かせて、水城先生が近づいてくる。




「澤木さん、今まで勉強してたの？」




「はい」




「あんまり無理しないでね」





「でも、無理しないと受からないから・・」





優しさで言ってくれているとわかるのに、私は水城先生に苛立ってしまう。





「若いわね。私がそんなに頑張ったら倒れちゃう」





そう言って水城先生は、私を気遣うように笑った。






派手にならないくらいに、品よく染めた髪。





嫌味じゃない程度の、だけど一目で高級なものだとわかる、一粒ダイヤのネックレス。




私がつけたこともない口紅。




華奢で形の良いハイヒール。






「・・・先生、29歳ですよね？」






「そうよ？もうすぐ30。嫌になるわ」





「・・・私は、水城先生が羨ましいです」





「え？」




「私も今すぐ、30歳になりたいです。私も今すぐ、大人の女性になりたいです」





呆気にとられたように、水城先生は黙りこむ。






私がどんなに努力しても、みっくんとの年の差は埋まらない。





妹にしか見てくれないの。






どうして私は17歳なのかな。




誕生日が来ても18で、全然、みっくんには追い付けなくて・・・





「・・澤木さん？」





「・・・ごめんなさい。やっぱり、疲れてるのかな？」






無理に作った笑顔は、更に水城先生を心配させているみたいだった。




「さよなら」




勢いよく頭を下げて、私は水城先生から逃げ出した。







悪いのは、水城先生じゃない。




悪いのは、みっくんじゃない。




悪いのは・・





悪いのは、みっくんのことを好きな私なのかな。

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