君は俺の運命【灰谷蘭】 (ページ37)

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▼第8部　運命ページ37

翌朝、いつも通りに2人を送り出した後、
ユリは念入りに身支度を整えた。

スマホは使えないため、必要な情報は全て頭で覚えた。
カードも場所がバレる恐れがあるため、現金を用意した。

そして、ゴメンなさい…と心の中で言いながら、
ライターを火災報知器に近づけた。

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スプリンクラーが作動し、サイレンが鳴るのと同時に、
管理人からインターホンへ連絡があった。

「大丈夫ですか？火事ですか？？」
「煙が…でも玄関の扉が開かないんです！」

ユリの切迫した演技に騙された管理人は、ロックをすぐに解除してくれた。

罪悪感を感じる間もなく、スマホが鳴りだした。
きっともう、蘭にはバレている。

ユリは一目散に非常階段を降り、
タクシーで渋谷への大学病院へ向かった。

久しぶりの外の空気を満喫する暇もなく、
産婦人科を目指す。

診察を終え、祈るような気持ちで待っていると、
やはり医者はこう告げた。

「おめでとうございます。
　妊娠3週間ですね。」

浮かない表情をするユリに、医者は遠慮がちに尋ねた。

「失礼ですが…
　何かご事情でもおありですか？」

「いえ…あの…聞きにくいことですが、
　もしも産まない選択をするのなら…
　タイムリミットはいつ頃でしょうか…」

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その頃蘭は、鶴蝶と手下を引き連れて、
現場へ向かう途中だった。

ボーッと外を眺めていると、スマホが鳴った。

通知を見るや否や、血相を変えて、ユリに電話をかけた、
が、やはり出ない。

まさか…逃げた？

窮屈な思いをさせている自覚はあった。
大人げない態度をとっていることも。
でも、それでもユリは自分の元からは離れない、
絶対の自信があった。

その確信が持てなくなった今、蘭は生まれて初めて、
本気の焦燥感に駆られていた。

車を停めさせ降りるやいなや、必死の形相で走り出した蘭に、
手下たちは驚いたが、鶴蝶はユリのことだろうと察した。