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じゅういち ページ11

「ほらご覧。ヨコハマの街が一望できる高所から落ちて地面に叩きつけられたら君なんてただの肉の塊…塊にすらならないかもね」

「たすけてっ」

「偽物に助けなんてあるわけ無いだろ?」

「っ!!!」

窓から突き出された体に風がびゅうびゅうぶつかる。
彼女の殺生与奪権は自分の腕を握っている太宰の細い手にある。
折角着せてもらったドレスが花びらのように舞う。

「良い目だね。死に怯えるなんて贅沢だ」

「違う、死ぬの、怖くない。
中の、暴れそう、嫌」

「へぇ、いっそ暴れたら?」
その言葉と同時に太宰は手を離した。



驚きのあまり声も出なった。

眼前から消えた小さな身体を追いかけようと太宰から手を離して異能を発動させる。

窓に足をかけた。
まだ頑張れば手が届く。

彼女の紫の目が見え、そのまま落ちていった。

飛び出そうとした。

「過保護も大概にしなよ」
エリス嬢に脚を掴まれ、太宰に腕を掴まれたことで異能の発動はおろか、身動きすらできない。

それが首領のお考えだから。

揉み合って数秒。

いくら高いと言えどそろそろ地面にぶつかる。

そう思った次の瞬間。

轟音とともにガラスの割れる音、地鳴り、建物の悲鳴が聞こえた。

目の前で割れたガラスはそのまま宙に留まっていた。
ーーまるで俺が重力操作をしているように。

「あいつ!上手くいったのか!」

「ふん、なぁんだ」

窓際で様子を見ていた太宰はつまらなさそうに言った。

太宰の手が離れた瞬間に駆けるようにして窓から飛び降りた。

地上から数メートルしか離れていない場所にそれはあった。

烈火のような紅い瞳が夕焼け空の一点を見つめていた。

「おい!A!しっかりしろ!!」

「…ゅーや…ん?」

抱きかかえながら重力を軽くして、2人で文字通り羽のように着地した。

「自分で異能が使えたぞ!」
「ちゅーやさん…?ちゅーやさん!!!」

地面に立たせ、焦点が合うと同時に座り込んでしまった。

しゃがみ込んで視線を合わせると勢い良く抱きつかれ、その拍子に尻餅をついた。
周りには隕石でも落ちたかのようにヒビが入った。


「助けてくれた!!嬉しい!!」

「手前の力だよ」

「違う、借りた力。今は、ちゅーやさんに借りてる」

そう言って彼女は青い瞳で俺を見つめ返した。

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作者名:蘭兎 | 作成日時:2019年8月1日 22時

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