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「えぇー、また中也と雑用?森さんどうにかならないの?このちっさい単細胞と行動してるだけで疲れるんだけど」

「ンだと手前!!?」

「あー、煩いなぁ、また小さいのが騒ぎ出した…え?…へぇ…そうなんだ。うん、分かった。じゃあね」


任務の終わりに端正な顔の半分に痛々しく包帯を巻いた少年の携帯電話が鳴った。

彼は太宰治。16歳だと言うのに痩せっぽちで小柄な体躯である。

そしてその横で騒ぐのは同じ齢の帽子を被った少年、中原中也。

太宰に比べるともっと小柄であるが、しなやかな筋肉を身にまとっているのが分かる。
そしてこの少年、小柄である事を気にしている。
故に禁句である。

そんな2人が黒服の男達を数人連れてやって来たのは某港。

コンテナの積まれた迷路を進むと遠くで船の汽笛が聞こえる。

空には青く鋭く輝く寒月が浮かんでいた。

太宰が黒服達にそれぞれ指示をして2人だけになった。
「さて、中也も仕事してよね」

「それだけで分かる訳ねぇだろ」

「ほんっと、使えないよね。少しは頭働かせたら?いい?さっきの電話はウチの積荷の乗った船が攻撃を受けて沈んたって報告」

「敵襲か?」

「それを調査するんだってば。脳筋って生きるの楽そうだよね。他人に聞けば答えが出てくるんだから。犬の方がまだ賢いよ」

少年の暗い瞳が、夜の海を遠くまで見つめる。

「はっ、言ってろクソ鯖」

海から近付いてくる気配を感じて中原も海を見つめた。
中原の身体が異能発動の明かりを灯す。

そして、

少年2人は風に舞う枯れ葉の如く吹き飛ばされた。


海から大砲の如く「何か」が2人に衝突した。

背中からコンテナにぶつかり、肺の中の空気が全て押し出された太宰。

煙の向こう側に「なにか」が去っていくのを目視し、中原に追うように指示を出した。

「待ちやがれ!手前ナニモンだ!」

一方的に中原が吠える。
襤褸布が翻るのは見えるが、「なにか」は中原より小さく、足音がしない。

とんでもない速度で逃げる「誰か」と追いかける中原。

あと少しで追いつくというのに積みあがったコンテナの迷路の角を曲がった先に、「誰か」はいなくなった。

見失った―――。

足音を響かせて中原がコンテナの迷路を進みだす。

それを上から見つめる人物がいた。

その人物はそっと地面に降り立ち、道を歩み始めた。

「やぁ、さっきはよくもやってくれたねぇ」

苦し気に呟く声が聞こえた。

「鬼事は終いだ」

鳶色の瞳が輝いた。

さん→←いち



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作者名:蘭兎 | 作成日時:2019年8月1日 22時

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