marionette doll【霧隠ラント】

29，花火 ページ36

──花火が始まった。

私たちは予定通り、ジンペイ君とエマちゃんを2人きりにすることに成功し…私とフブキは2人で行動することに。
マタロウ君とサン太夫君、それにメラ先輩は3人で行動するはずだったけれど……。

メラ先輩は、どこかへ行ってしまったようだ…と、いうか…犬猿の仲の「九尾リュウスケ」先輩と、ばったり鉢あった挙句、喧嘩になったらしい……道理でいないはずだ。

花火が盛り上がっていくにつれ、喧嘩も止まるだろう…と待ち合わせ場所だけ約束して…私とフブキは、少し離れたベンチに座って、花火を見ていた。

黒いキャンバスに、光り輝く星々。
それを照らす、色とりどりの光。
…本当に、綺麗だった。
こんな景色なら、ずっと見ていられる。
…日頃の嫌なこと──主にこの間の部屋の件とか──も忘れてしまえそうだった。

そんな私の様子を見て、フブキは気まずそうに「聞いていい？」と質問してきた。
これから聞かれる質問の内容も分からないのだから、正直この質問は、どう転んでも了承の返事をする方がお得なのだろう…が、そんなこと考えずとも…
フブキの質問なら、私はどんなものだって応えるつもりだった。

「いいよ。何？」

何となく、何を聞かれるかは分かってはいるが。

「……霧隠先輩と、何かあった？」

「…うん、まぁ……色々と。」

あまりに予想通りの質問だったが、流石のフブキとも言えど…全て包み隠さず答えるのには抵抗があった。
…というより、情けなさすぎて言える訳がない。
そんな私の様子を察してくれたようで、フブキはそこを詳しく聞くことは無かった。

ただ、議題を少し変えて。
彼女が再びした質問は、とても答えやすいものだった。

「…昔と霧隠先輩が変わったって、よくAは言ってるけど……具体的にはどんな感じだったの？」

そこには、私の昔話も関係してくる──念の為、その旨を伝えたが、嬉しそうに了承してくれた──。
…了承があるなら、心配なさそうだ。

それなら、少し懐かしい思い出を語り始めようか。


小学生の頃の、優しかった『霧隠ラント』君との思い出を。

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