marionette doll【霧隠ラント】

19，幸せな時間 ページ25

「つまり、YSPクラブはその『妖怪スペシャルパワー』を使って、霊的存在が引き起こす事件を、解決していくクラブで……って、何ニヤニヤしてんだよ！」

エマちゃんとジンペイ君が晴れてお付き合いするようになった日……
ジンペイ君は、部室でYSPについて説明してくれていたのだが…いかんせん、ジンペイ君を見ているエマちゃんの顔が、あからさまに惚けているのだから…
説明に集中など出来なくて、ついついニヤけてしまう

「いや…別に？ニヤニヤなんてしてないけど…」

「嘘つくなよ！も〜、からかうなよなー！？女の子と付き合うなんて、オレ初めてなんだよ…」

その言葉を発した瞬間、心が撃ち抜かれた。
いや、冗談抜きで本当に、弓で射抜かれたような…
ズキュンッと形容するのがいいだろうか──少々、野太い音がして、完全に射抜かれた。
…可愛すぎない？このカップル…。

どうやら、撃ち抜かれたのは私だけではなかったようで…全員、机に突っ伏していた。フブキに至っては
もう拝んでたし、あのメラ先輩でさえ心臓を抑えて唸っていた。

心配そうに顔を伺うエマちゃんに、不安を抱かせないようにと…根性で起き上がったが…あぁ、なんて癒しなんだろう…。

「…と、とにかく！話が逸れたけど…ようはYSPクラブは、危機を救うヒーローってことだ！な、カッコイイだろ？」

「ヒーローかぁ……私もなれるのかな。怨霊？ってのも見えないし……役に立てればいいんだけど」

ヒーローというのは、いついかなる時代でもカッコイイものだ…しかし私は、彼らの1番の特徴であるYSP…つまりは怨霊を操る力を持っていない──
更に言ってしまえば、怨霊も見えない
(私とマタロウ君の1番の違いはここだ)
…どうやらこの部屋には、大きな猫と、小さなアルマジロと喋るピンクのモモンガ…更には、ピアスだらけの大柄の男もいるらしいのだが、私は全て見えない。ぼんやりとも。気配すら。

そんな私でもいいものかと、再度確認したくて…ジンペイ君にそう問うと。

「何言ってんだよ。怨霊が見えなくたって…
お前はもう、十分ヒーローだろ」

「…え？」

「ジンペイさんの言う通りです…フブキさんとAさんにアドバイスして貰えなければ…私は、決心できないままでした…」

ジンペイ君のセリフに驚いて顔を上げると、エマちゃんは私の手を取ってそう言ってくれた。
本当にありがとうございます。と続けるその笑顔を見ていたら、恋愛経験ゼロの私がアドバイスした案でも、役に立ったのかな…なんて、少し過信してしまった。

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