唇はお預け/ky ページ22
時計を見ては焦ることを繰り返している。今日は彼氏とのデートなのだが支度に思っていたよりも時間がかかり遅れてしまった。
待ち合わせ場所の駅に着き、辺りを見回す。
「俺を待たせるなんて偉くなったもんだなぁ？」
後ろから聞こえる声の持ち主は振り向かなくても分かってしまう。
「ごめんねキヨくん？」
「別に。ていうか冗談だし」
「行こ」と言いながら差し出された手に私は自分の手を重ねた。
いつもは何も感じない並木通りもイルミネーションで飾られてキラキラと輝いている。サンタクロースの格好をした子供とすれ違い、微笑ましくなった。私はクリスマスの雰囲気が好きなのだが、キヨくんは「大人になったしそんなに浮かれはしない」と言っていた。
ふと目線を変えると見覚えのある2人が目に入る。
「キヨくん、あれって……」
「あ、うっしーとうっしーの彼女じゃん」
やっぱりそうか、と思い見ていると、2人は唇を重ねた。死角になっていて見えにくいとは言え、ここは人がいる。しかしこんな所で…と当事者ではないのにドキドキしている自分もいた。
「なんか見ちゃダメだな」
キヨくんはそう言って体の向きを変え、進める方向を変えた。それに引かれて私もついて行く。なんだかドラマのキスシーンを見て気まずくなる時の空気になっている気がする。私の頭はキスでいっぱいになりキヨくんの唇にしか視線が行かない。
「……何？」
「へ？」
「いや、さっきから凄い見られてる気がすんだけど」
唇に視線が行き過ぎていた事は何も触れてこないので少し安心した。さっきのことでキスを意識するなんてなんだか子供みたいで恥ずかしい。
キスしたいな……
「……今？」
「へっ！？あれっ！？わ、私声に出て「出てた」
最悪だ。爆弾発言をさらりとした自分が恥ずかしすぎて消えたい。「ち、違うの、決してさっきの意識してるとかじゃなくて……」と言い訳をするが口を開けば開くほどいらない事を言ってしまっている。
「A、目閉じて」
「はっはいっ！ってえっ！？」
勢いで目を閉じたがキスをされるのか、と思うと戸惑って焦ったが唇は既に触れていた。唇じゃなく…額に。
「あ、れキス……」
「キスしたいって言ったのAじゃん」
「唇にするかと」
そう言うとキヨくんは人差し指を私の唇に当てた。
「今するとうっしー達に感化されたみたいだから、唇はお預け。また今度な」
そう言いながらキヨくんはニヤリと笑った。
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます！ (2020年1月8日 6時) (
レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2019年11月30日 10時
