紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

. ページ29

、


「すっぱい…」

「酸っぱかった？」

「食べる？すっぱいよ？」

ミカンを一粒、唇に押しつけられる。



「ありがと」

そのままパクッと食べると
Aの指に唇が触れる。



「っ…！」

Aは指をバッと離す。


「ご、ごめん」

「う、ううん…ごめんなさい…」

勢いよく離されて少し傷つくけど咄嗟に謝る。

でも、




Aの顔が真っ赤に染まっていて

そのことのほうが重要だった。




「わわ、私、ちょっと翔平探してくるね」

「あ、うん…」




「あれ？Aは？」

入れ違いでやって来た樹と慎はキョロキョロと見渡す。



「いないよー、なんか逃げられた…」

俺なんかしたのかな…
なんであんなに真っ赤になって・・




「北人さんなんかしたんでしょー」

「は、はあ！？言いがかりだわ！」


樹はつまんなさそうにソファーに座る。




「ミカン食べてて…指に唇が……
…え、まさかそれ！？」


いやいや、まさか・・



「指にキスしたくらいで逃げないですよ」


慎の呆れた声がうんざりしたように言うと




ガシャンッー


陸さんが躓き、壱馬が雑誌を落とした。



「２人して何してんすかー」


「北人、ほんまにそのあとA出ていったん？」

樹のため息より壱馬は俺を睨むように見た。




「え、たぶん？それ以外何もしてないし…」






「壱馬さんも陸さんも２人して慌てるって
Aさんに何かしたんですか…？」



誰よりも冷静にそう言ったのは
まこっちゃんなんて可愛いあだ名の面影もない長谷川慎。





「キスした」


「は、」

「え？」

陸さんのその言葉に反応したのは
俺と樹で




「じゃあ壱馬さんも、キスですか？」


冷静に言えてしまう慎に






「キスは別に最近のことじゃないけど」



悪びれる様子も後悔も自責すらない壱馬。





「うっひょっひょっ」

「あはははは翔平その笑いかた
つられて笑っちゃうからダメだよー！」



「あら、皆さんお揃いで〜うっひょ」



最悪のタイミングでAは
翔平を連れて戻ってきた

けど、そんなことも知らない翔平は
いつも通りの翔平。




「なぁ、Aちょっと」

Aに近寄り手を伸ばした壱馬




「はい、壱馬さん握手〜」


その手を握ったのは紛れもなく、







「翔平…？」



「今日もいい手ですなーうひょっひょっ」






A含め全員が目を丸くした視線の先にいる

いつもどおりニコニコした翔平だった。




。

F.I→←Y.H

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す