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おそろいで買ったアウターを着るのが楽しみで少し浮き足立つ。
ショップを出て、何を食べるかなんて話をしているとAさんが足を止めた。
「…かわいい……」
呟くように言う彼女の視線を辿る。
ガラスの奥でトルソーが着る鮮やかな色のワンピース。
「あのワンピースですか?」
「うん…、かわいい」
羨ましげに見つめるAさん。
「・・・見に行きましょう」
「えっ!?いい、いい!可愛いなって思っただけだから!」
「いいですから、行きますよ」
強引に腕を引っ張りお店の中に入る。
Aさんの普段着はスポーティーで、動きやすさ重視。
ショートパンツも可愛いけど、たまにはスカートを履いてもいいのにとよく思う。
グループのイメージを壊したくないからと以前言われたことがある。
女が一人いるだけで雰囲気が違う、変わるということを誰よりも気にかけている。
そんなこと気にしなくていい。
好きなものを、着たいものを、身につけて笑っていてほしい。
なんてことを思うけど、口には出せない。
年下の僕らが何を言ってもAさんは笑って頷くだけなんだから。
「色は……表に飾ってあるのが一番似合いそうですね。あれにしましょう」
「ちょ、ちょっと待って!慎くん!私着ないよ絶対」
「大丈夫、着させます」
近づいてきた店員にサイズとカラーを伝えると直ぐに持ってきてくれた。
「はい、試着室へどうぞ」
「まっ、待ってほんとに!」
「こちらへどうぞ」
店員さんの営業スマイルに笑顔をひきつらせながらも大人しく試着室へ入っていった。
接客をされるのが苦手なAさんが、店員さんに案内されて断るわけがないのももう十分に知っている。
5分経ったら勝手に脱いでしまいそうな気がして、試着室の横で着替えるのを待つ。
「Aさーん、着替えましたね?開けますよ」
「えぇっ待って待って」
着替えを終えてもカーテンを開けないAさんが悪い。
強制オープン。
シャッと勢いよく開くカーテン。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
シャッ
「ちょっ、慎くん!?閉めるの!?」
「あっ、すいません……」
無意識にカーテンを閉めてしまい、もう一度、次はゆっくりと開ける。
「やっぱり、変だよね…」
「…いや、似合ってますよ。……似合いすぎてダメなやつです」
目が合うと思わず目を逸らしてしまう。
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梨味(プロフ) - ナイトさん» 感想をありがとうございます。続きも大好きと言っていただけるようのんびりではありますが頑張りますのでまたぜひ読んでみてください。感想ありがとうございました! (2019年9月22日 18時) (レス) id: 190515c801 (このIDを非表示/違反報告)
ナイト(プロフ) - お話大好きです!切ないけどそういう系が好きなので!続きも楽しみです! (2019年9月22日 14時) (レス) id: b4456d44f3 (このIDを非表示/違反報告)
梨味(プロフ) - やなぎさん» 読んでいただけたことに大変嬉しく思います。そして最大級のお褒めをいただきありがとうございます!このお褒めの言葉を支えにのんびりではありますが更新を頑張りたいと思います、ありがとうございます。 (2019年9月22日 13時) (レス) id: 190515c801 (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ(プロフ) - ほのぼのしてると思いきや、切ない恋愛要素もギャグっぽい要素もあってスラスラ読めます…。梨味さんは天才ですか!? (2019年9月22日 10時) (レス) id: 9fa79fa5ce (このIDを非表示/違反報告)
梨味(プロフ) - MoMoさん» コメントありがとうございます!返事がこれで出来ているのか不安なところがありますが、ご期待に応えられるよう努力させていだだきます。もう少しお時間頂くことにはなりますがお待ちいただけると幸いです。頑張ります! (2019年9月22日 0時) (レス) id: 190515c801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨味 | 作成日時:2019年9月19日 12時