それぞれの道

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「……。Aさん、」

「え？…あ、えと、千冬。何？」


腕をグイっと引き寄せられて、体勢を崩しかけたけど千冬が支えてくれた。





「あの、今度俺にもまた、お菓子の作り方教えてください」

「勿論良いよ、何を作りた―――」

「――俺が教えてやるよ、千冬。俺も料理は得意だからさ」






…おおおーい、何故ここで急に割り込んだーーー隆！







私は千冬とクッキングがしたいんだよ。


『味見してみよっか』

『はい！…ん、美味しいっス！』


的な感じの仲良し姉弟クッキングをしたいのよ。




私の肩に肘を預けて、な？と良い笑顔で微笑む隆。




「三ツ谷君、妹さんとかの世話で忙しいんスよね？いいっすよ、無理して俺に付き合わなくても」

「心配すんなって。俺ん家でやればいい話だからさ。ルナマナにも食わせてやれるし」

「へぇ、」




…あれれれれ、なーんかバチバチ感漂ってる感じに見えるのは気のせいですかな？
お互い一歩も譲らない、みたいな雰囲気だが、いったい何を譲らないってんだ。




…もしや隆がライバルなのか？兄貴属性溢れる隆も、子犬系弟である千冬を狙ってて――――…やめよ。何か話がおかしな方向に、具体的に言うと腐な方向に向かってる気がしたので。



とりあえず割り込んだ。



「言っとくけど隆、千冬の愛くるしさを最初に見出したのは私ぞ？千冬愛で道のパイオニアは私ぞよ？」

「――は？」

「いくら隆でも、千冬は渡せないな。だって千冬は元から私のものなので」



渡さないアピールの為に、隆から千冬を手で防御。




「お前のものって…」

「―――あ、ごめん、千冬、そういう言い方って人権侵害だったね。すまない」

「！、全然構わないっス、むしろ俺は、ずっとAさんの所有物でいたいです…」



所有物て。なんか誤解を招くような発言な気が。



「所有物…、それってつまり、オレの心も、か、身体も全部、Aさんに支配されてるっつうことで……Aさんに、支配。――――やべ、すげぇイイ」



ちょっと待ってなんか千冬が一人で、恍惚とした表情でしゃがみ込んで何か言ってる。
自分で言って自分で興奮するって、本格的にやばい奴感が。ああそして顔赤くしてる千冬も可愛いとか思っちゃう私も私でやばい。




「―――へぇ、」

あーそしてこっちもやばかった。隆の笑顔が引き攣ってる。これぞまさしく板挟み。我いかに。

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