一話-一 終焉を知らせる者 ページ3
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『
陽動にかかり、襲い来る魔界の刺客を深追いした結果、天界の最強格の一人であったユウ・ビスト・ヴェーアは深い傷を負ったのである。
今思えば、見るからにこちらをおびき寄せるものだった。天界に帰還出来るほどの神聖力もなく、何とか逃げおおせた彼は人間界で一人の女性に拾われた。
アイリと名乗った彼女は過剰なくらいに世話をしてくれて、五日ほどで立って歩けるようまでに回復した。
立ち上がったユウは手を広げて、深く息を吸う。
ゆっくりと、しかし確実に、神聖力は循環し始めて、ユウは慣れ親しんだ重みが背中からかかるのを感じた。
ふわり、と羽根が舞った。純白の翼から零れた羽根は、極光のように煌めきながら床におちていく。
損傷は気にならないほどに回復している。もう二日も経てば、全力を出すことも出来るだろう。
まだ再生しきっていない翼を撫でながら、ユウは「そういえば」と首を傾げた。
普通の人間には天使の姿は見えないはずなのに、なぜアイリには自分を助けることが出来たのだろうか。人間に天使は見えないはずだし、人間界ではあまり見ない翡翠色の髪の、おまけに妙な(人間の基準で)服装をした血塗れの人間を拾ってくれたなんて驚きでしかない。
まさか同類?
そんな有り得ない発想をして、ユウは首を振る。
神聖力が尽きかけていたせいだろう。自分で姿を見せようとすれば出来るわけだし、実際に翼を隠し人間界に降りたこともある。きっとそういう理由だろう。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 19時